土地・建物Q&A
土地・建物Q&A

土地家屋調査士とは

A1.土地家屋調査士(以下「調査士」という。)は、土地家屋調査士法(昭和25年7月31日法律第228号)により創設された国家資格です。同法第3条では、「調査士は他人の依頼を受けて不動産の表示に関する登記につき必要な土地又は家屋に関する調査、測量、申請手続又は審査請求の手続・筆界特定の手続等をすることを業とする」としています。具体的には、国民の重要な財産である土地・建物について、所有者の依頼を受けて、土地では境界の確認、境界標の確認または設置、面積測量、復元・分割測量等、建物では所有権に関する調査、所在・種類・構造の調査と床面積算定、区分建物・滅失等の現地調査により登記申請手続をする職業です。そして、現地調査に基づく成果を基に、土地については、分筆登記(一筆の土地を二筆以上に分割する)、合筆登記(二筆以上の土地を一筆に合併する)、地目変更登記(畑を宅地に変更する等)、地積更正登記(登記記録に表示された面積を訂正する)等があり、建物については表題登記(新築建物など登記されていない建物を登記記録へ記録する)、床面積・種類変更登記、合併登記(登記された建物を他の登記された建物の附属建物とする)、滅失登記(建物を取り壊し、または焼失等により物理的に消滅したとき)等の書類を作成し、管轄登記所に対し、所有者を代理して登記申請手続をすることが調査士の仕事です。

A2.土地家屋調査士と測量士とはいずれも国家資格です。土地家屋調査士は、法務大臣が行う土地家屋調査士試験に合格した者です。業務を行うには、法務局又は地方法務局の管轄区域ごとに設立されている土地家屋調査士会に入会し、日本土地家屋調査士会連合会に備える土地家屋調査士名簿に登録を受けなければなりません。一方、測量士は、測量法第50条第1項第1号から4号までのいずれかの資格を有するか、第5号の国土地理院の長が行う測量士試験に合格した者で、国土地理院に登録をしなければなりません。職務内容は、土地家屋調査士は、他人の依頼を受けて、不動産の表示に関する登記について必要な土地または家屋に関する調査、測量、申請手続及び筆界特定手続書類の作成並びに同手続の代理を主な業としています。測量士は、主として国や公共団体等の行う基本測量や公共測量を請け負って実施します。したがって、登記申請のための調査、測量、図面の作成は土地家屋調査士の業務となります。

A3.不動産に関する登記は大きく分けて二つに分けられます。一つは不動産を特定するための登記であり、もう一つはその特定された不動産に誰がどのような権利を持っているかを登記するもので、前者は土地家屋調査士が登記手続を行い、後者は司法書士が行います。以下詳細に述べます。土地家屋調査士は、土地家屋調査士法(昭和25年法律228号)に定められ、その目的は、不動産の表示に関する登記手続を円滑に実施し、不動産に係る国民の権利を明確にするためと規定されています(調1)。不動産の表示に関する登記とは、登記記録の表題部に記録される不動産(土地・建物)の物理的状況を表すもので、土地であれば、どこに、広さは、利用状況は等、建物であれば、どこの土地の上に、構造は、階数は、利用状況は等を表す登記が表示に関する登記です。土地家屋調査士の業務は、表示に関する登記に係る申請手続で、土地では分筆登記、合筆登記、地積更正登記等で、建物では新築登記、増築登記、滅失登記等です。一方、司法書士は、司法書士法(昭和25年法律第197号)に定められ、その目的は登記、供託及び訴訟等に関する手続の適正かつ円滑な実施に資し、もって国民の権利の保護に寄与することを目的とすると定められています(司1)。登記に関する具体的な業務は、登記記録の権利部である甲区・乙区に記録される権利に関する登記手続の申請を行うことです。なお、権利に関する登記とは、甲区の所有権に関する登記及び乙区の所有権以外の権利に関する登記であり、原則として登記権利者と登記義務者が共同して申請するものです。 以上のように土地家屋調査士と司法書士は、同じ登記手続とはいえ業務の内容を異にしています。

A4.あなたの建てられた建物はまだ登記記録がない状態ですので、新築後一月以内に建物の物理的状況(○市○○町○○番地に木造○○ぶき○階建の住宅○○㎡等)を公示する建物表題登記を行い、建物表題登記が完了した後に登記記録の甲区に初めてする権利の登記として所有権保存登記を行います。以上の登記のうち、建物表題登記は新築後一月以内に申請することが法律で義務付けられています(法47)。なお、所有権保存登記申請は所有者の任意ですが、建物新築のために金融機関から融資を受け抵当権設定登記をする場合には、所有権保存登記が必要になります。以上の表題登記を所有者に代わって行うのが、土地家屋調査士であり、所有権保存登記や抵当権設定登記等の権利に関する登記を代理するのが司法書士ですので、パンフレットは少し説明が不足しているように思います。土地家屋調査士と司法書士との業務の違いの詳細については、別項を参照してください。

A5.土地家屋調査士に依頼するときの費用は、大きく分けると、報酬と実費の2種類となります。報酬は、調査業務、測量業務、申請業務、書類作成等になります。調査業務は、登記所、官公署、市町村役場、依頼人、隣接所有者等が持っている業務に必要な図面や書類を収集し調査検討します。また、現地の状況の調査が必要な場合は、事前調査を実施し測量計画を立てたり、必要に応じ民有地や官有地等との境界確認業務を行います。測量業務は、調査した業務を基に土地や建物を測量し、面積等を調査し収集した図面・書類等を精査します。申請業務は、申請書や書類を作成し登記所へ申請します。 書類作成は、申請業務に必要な書類や図面を作成します。 実費は、登録免許税、収入印紙、旅費交通費、境界杭・材料費等が該当します。報酬についての全国平均報酬ガイドは、日本土地家屋調査士会連合会から業務報酬統計資料として公表されていますが、地域、業務の難易度により差が生じますので、業務を依頼する際には見積書を請求するようお勧めします。ただし、見積はあくまで概算であり、作業の難度が高かったり、隣接地所有者との立会業務に予想以上の時間を費やしてしまったりする場合は、報酬について見直しのお願いをする場合もありますのでご理解ください。

土地についてのQ&A

公図・登記事項証明書に関すること

A6.公図とは、登記所に備えられている土地の境界や位置を確定するための図面で、大きく分けて旧土地台帳附属地図(公図)と不動産登記法第14条で規定された地図(以下「法第14条地図」という。)の 2種類があります。法第14条地図は、登記所の地図作成作業、土地区画整理事業、地籍調査事業等により、精度の高い調査・測量の成果に基づいて作成されたものです。ただし、すべての地域に備わってはいません。また、公図は、明治時代の地租改正の際に作成された図面を基にしたものであり、昭和25年以降に税務署から登記所に移管されたので旧土地台帳附属地図と呼ばれています。この旧土地台帳附属地図は一般に公図と呼ばれているものですが、地租改正当時は現在とは異なり、測量技術も未熟で、税金(地租)を少なくするように面積を小さく測定することもあり、必ずしも正確なものではありませんでした。したがって、公図の場合、現地を正しく反映しているとは言えない場合があります。ただし、旧土地台帳附属地図は、登記所に法第14条地図が備え付けられるまでは、これに代わる「地図に準ずる図面」として取り扱われます。この旧土地台帳附属地図は、不動産登記法の改正により、当初の和紙からポリエステル製へと変遷し、現在は電子地図(コンピューターに入力し、磁気ディスクにより管理されている)として保管されています。

A7.公図と登記記録は登記所で保管しています。公図・登記事項証明書(従前は登記簿謄本と呼んでいた)の取得は、登記所のコンピューター化以前は各不動産管轄の登記所に行くか郵送でないと取得できませんでしたが、全国の登記所がコンピューター化され、他の管轄であってもどこの登記所でも原則取得することができます。例えば、さいたま地方法務局川口出張所で大阪法務局管轄の登記事項証明書が取得できます。取得の方法は近くの登記所に行って申請する方法(申請用紙は窓口にあります)、インターネットを利用してオンラインで申請する方法又は郵送で請求する方法等があります。なお、申請のときにご注意いただきたいのは、住居表示の番号(○○丁目○○番○○号)では取得できませんので、権利証等で正確な地番・家屋番号等を確認し記載してください。

A8.登記所に備えられている地図には、大きく分けて明治時代に作成された旧土地台帳附属地図(いわゆる公図)と不動産登記法第14条に定められた地図(法第14条地図)があります。公図は作成経緯から必ずしも正確なものではありませんが、法第14条地図は精度の高い調査・測量の成果に基づいて作成されたものです。ご質問の、公図の地形と現況とで大きな差異があるとのことですが、ここで言われる公図が、いわゆる公図なのかあるいは法第14条地図なのか不明のため端的にお答えしかねますが、公図も地図もできる限り現地の形状に近い形であることが望ましく、可能ならば地図訂正の手続をされることをお勧めします。ただ、可能ならばと申し上げたのは、地図訂正をするためには、公図に誤りがあるとの正当な事由があり、それを証明する書類等が必要となりますので、詳細については、近くの土地家屋調査士に相談されるようお勧めします。なお、数十年前からの御影石が境界を挟む両者の話し合いで公図とは別の位置に埋設され現在に至ったとなれば、それは地図訂正ではなく、分筆等によって現況に合わせることになります。

A9.公図の境界線の訂正をするためには、管轄登記所宛に地図の訂正申出書を提出します(規則16)。なお、状況によっては地図訂正が不可能な場合もあります。土地を二分して何年経過しているか、また分筆登記をどのように申請したか等不明ですが、地図訂正をするためには、その申出が相当であることを明らかにするため、次のような方法及び書類が必要となります。

①地図訂正申出は、あなたとA氏の共同で申出人となり、実印を押印し、印鑑証明書を添付して申出てください。
②形状に誤りがあることを証明する書類
③土地所在図・地積測量図
④隣接地(官地を含む)の同意が得られればその同意書も添付

地番に関すること

A10.数筆の土地を一筆にするには合筆登記という手続を行います。ただし、合筆登記をするには次の要件を充たしていなければなりません(法41)。

①合筆しようとする土地の所有者もしくは所有権の登記名義人がすべて同一であること。
②合筆しようとする土地の地目がすべて同じであること。
③合筆しようとする土地同士が直接接していること。
④地番区域が同一であること。
⑤所有権、地役権の登記以外の権利の登記がないこと(ただし、抵当権、根抵当権の登記があっても登記の日付や登記の内容がすべて同じの場合はこの限りではありません)。

さて、ご質問についてですが、地目が山林と登記されていること以外は上記要件を充たしているということでお答えさせていただきます。手続としては、②の合筆しようとする土地の地目をすべて同じとすることが要件ですので、二筆の土地の地目を宅地にする変更登記に他の二筆を加えた四筆の土地の合筆登記の手続をすることになります。これにより一筆にすることができます。なお、合筆の登記をした結果、合筆後の地番と建物の登記の所在地番が異なってしまうことがありますので、その場合は土地の地番に合わせるため建物の所在地番変更の登記をすることをお勧めします。

A11.合筆の登記とは、数筆の土地を合併して一筆の土地にすることですが、合筆後の地番の定め方は準則で合筆前の首位の地番をもってその地番とすると規定(準則67Ⅰ⑥)していますが、同7号で特別な事情があるときは、適宜の地番を定めて差し支えないと規定していることから、ご質問の場合、原則は合筆後の地番は179番1となるところ、182番2を住所として使用しており、運転免許証、各種保険などがすべてその地番になっていると考えられるので、合筆登記を申請するときにその旨を特別の事情として申し出て、登記官に認められればあなたの希望に沿った地番とすることができると思われます。但し、特別の事情については、書面をもって申し出るようにしてください。合筆の登記手続は、上記の規定のほか幾つもの要件が規定されていますので、別項を参照ください。

A12.ご質問にお答えする前に土地区画整理事業の具体的な流れを説明します。土地区画整理事業は、事業区域全体に道路や公園などを計画的に描き、計画的に描かれた道路などに囲まれた宅地となる部分(街区という。)に従前の所有地面積に応じ、区画を整理して土地を割り振るといった事業です。そして街区内に割り振った区画の部分を画地といい、土地所有者に対し従前の土地(従前地)に対応して割り振られた土地を仮換地といいます。したがって、従前地の位置と仮換地の位置は必ずしも同じにはならないのです。あなたの買われた建売住宅は、土地区画整理事業実施中ということから、従前の土地は119番であり、その土地が仮換地として○○街区△△画地と指定され、その仮換地は元々 73番であった位置(これを底地という。)と考えられます。したがって、仮換地上に建てられた建物は、現在、土地区画整理事業が完成されていないことから、建物の登記は底地地番を用いることになり、事業完成までは、73番となるわけです。以上のことから建物の登記は「○○○73番地(仮換地予定地番○○街区△△画地)」として登記されることになり、住所は73番地で登録することになるわけです。ただ、買い受けた土地はあくまで従前の土地ですので、119番が登記されているわけです。土地区画整理事業が完了すれば、新町名に新しい地番がふられることになり、従前地、仮換地、底地などといった解りづらい表現は無くなります。

地目に関すること

A13.金融機関から融資を受けるか否かにかかわらず、建物を新築したときは建物完成後一月以内に建物表題登記をしなければならない(法47)とされていますので、まず建物表題登記をしてください。建物表題登記は、申請書に建物図面(建物の所在する位置を示した図面)、各階平面図(各階の床面積を算出した図面)、建物の所有権を証する書面および申請人であるあなたの住所証明書(住民票等)を添付し、登記所に申請します。そして建物表題登記が完了したら所有権保存登記をします。あなたは金融機関から融資を受けるとのことですから、所有権保存登記と同時に抵当権設定登記をすることになります。この保存登記された建物を担保にして、金融機関から融資を受けるわけです。また建物が新築されればその敷地は宅地になったわけですから、地目変更登記をすることになります。そして地目変更登記も一月以内に土地の所有者(あなたのお父さま)から申請することが義務付けられています(法37)。建物表題登記の申請に所有権を証する書面が必要とお話ししましたが、主なものは、建築確認済証、検査済証、建築請負人の工事完了引渡証明書、工事請負代金領収書等が挙げられますが、全てが揃わなければ登記が出来ないということではありません。また、借地上の建物の場合、貸主がその借地上にある建物があなたのものであるとの証明書も所有権を証する書面の一種となります。

A14.自動的に変更登記が行われることはありません。登記は原則として土地所有者の申請によらなければ行われません(法16)。したがってあなたの場合、用途が農地から宅地に変更されたわけですから地目変更登記は変更後一月以内に申請しなければならない(法37)とされています。農地(田・畑)を宅地に地目変更登記を申請する場合は、農地転用届出受理通知書を添付して申請することになります。

A15.不動産登記法は、一筆の土地ごとに一つの地目を定め、一筆の土地に複数の地目を定めることはできません。ご質問の場合、野菜畑の部分を畑として認定できるような場合であれば、野菜畑の部分を分筆したうえで地目変更登記をすることになります(分筆登記については、別項を参照してください)。ただし、ご質問は広い宅地の一部を野菜畑として利用しているとのことですので、地目を認定するには土地全体としてどう見るかにかかってきます。宅地の片隅に野菜を植えるなど庭畑とみられる場合には地目変更は難しいかもしれません。宅地と判然と区別され、耕作の用に供されているとみられれば、畑に地目変更は可能かもしれません。何れにしても地目の認定は、その土地の物理的な現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異の存するときでも、土地全体としての状況を観察して定めるものである(準則68)ことから、地目はどうしても個別具体的に判断せざるを得ず、ご質問について断定的な回答ができかねますがご理解ください。

A16.農地転用の許可を得ているので、宅地になっている筈だということを耳にします。しかし、農地転用の許可は、あくまで農地を農地以外に利用することを許可したもので、家を建てたからと言って登記上の地目が宅地に変わるわけではありません。地目変更の登記をして、はじめて登記上の地目が宅地となるのです。したがって、所有者が地目変更の登記を申請しない限りいつまでたっても登記上の地目は農地のままです。地目変更の登記は、不動産登記法により地目が変更されたときから一月以内に所有者が申請するよう定めています(法37)

A17.梅畑でも畑として地目変更の登記は可能です。登記上の取扱いとして、山林は耕作の方法によらずに竹木の生育する土地であり、畑は農耕地で用水を利用しないで耕作する土地(準則68)とされています。ただし、畑としての継続利用が前提となりますので、最寄りの土地家屋調査士によく相談されるようお勧めします。

A18.地目変更登記を申請する場合の添付書類については、特に規定はありませんが、農地を転用する際は、許可申請または届出が義務付けられており(農 4 Ⅰ、 5 Ⅰ)、農地を転用した場合の地目変更登記申請においては、実務上農地転用許可書あるいは同受理通知書を添付して申請することになります。ご質問のように農地転用の許可書が紛失等で添付できないときは、農業委員会において「転用許可があったことを証する書面」を発行してもらい、同許可書の代わりに地目変更登記申請に添付する方法があります。また、許可年月日が古く詳細がよく分からないようなときには、一定の条件のもと「非農地証明書」を農業委員会において発行する場合もありますので確認してください。なお、地目が変更されたときは、一月以内に土地の所有者には地目変更登記の申請が義務付けられています(法37)。

A19.農地転用の許可を受けると地目が変わったと勘違いしている人が多いようですが、この許可はあくまで「農地を農地以外の目的に利用してもよい」というもので、許可の目的どおりに駐車場として利用したときに地目が変更されたものとして取り扱います。そして、この変更があってから一月以内に所有者は、地目変更の登記を申請することが義務づけられています(法37)。したがって、ご質問の場合は地目が田となっていますので、現況と一致させるため地目変更登記の申請が必要となります。駐車場として使用している地目は、雑種地とすることが定められていますので、農地転用の許可書を添付して申請を行ってください。

A20.地目は、土地の用途を表わす区分であり、登記上23種類に分類されています(規則99)。そして地目の認定は、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異の存するときでも土地全体の状況を観察して定めるものとされています(準則68)。 雑種地とは、田、畑、宅地、山林など22種類に該当しない土地とされ、具体例として準則69条に次のとおり規定されています。

準則第69条(抜粋)
・ 水力発電のための水路又は排水路は、雑種地とする。
・ 遊園地、運動場、ゴルフ場又は飛行場において、一部に建物がある場合でも、建物敷地以外の土地の利用を主とし、建物はその附随的なものに過ぎないと認められるときは、その全部を一団として雑種地とする。
・ 競馬場内の土地については、…建物の敷地及びその附属する土地は宅地とし、馬場は雑種地とし、その他の土地は現況に応じてその地目を定める。
・ テニスコート又はプールについて、宅地に接続するものは宅地とし、その他は雑種地とする。
・ 火葬場については、その構内に建物の設備があるときは構内全部を宅地とし、建物の設備のないときは雑種地とする。
・ 高圧線の下の土地で他の目的に使用することができない区域は、雑種地とする。
・ 鉄塔敷地又は変電所敷地は、雑種地とする。
・ 坑口又はやぐら敷地は、雑種地とする。
・ 製錬所の煙道敷地は、雑種地とする。
・ 陶器かまどの設けられた土地については、永久的設備と認められる雨覆いがあるときは宅地とし、その設備がないときは雑種地とする。
・ 木場(木ぼり)の区域内の土地は、建物がない限り、雑種地とする。
その他では、建物のない駐車場、洗車場、資材置場、集積場等についても、雑種地の取扱いとなります。

A21.不動産登記法は、地目に変更があった場合は、変更があった時から一月以内に地目変更登記を申請しなければならないと規定しています(法37Ⅰ)。あなたの場合、建物の登記がしてあるとのことですので、その土地が宅地であることは明らかなので、速やかに地目変更の登記手続を行ってください。地目変更登記の申請書には農地転用届出受理通知書を添付するのが通例ですが、同受理書を紛失してしまったとのことですので、農業委員会の証明書を申請書に添付するとよいでしょう。あなたの場合、農地転用届出をして住宅を新築したとのことですので、上記方法により登記申請手続をすることで宅地に変更されるものと思われます。

A22.地目変更については、不動産登記法で用途(地目)が変更された場合は変更が生じた日から一月以内に地目変更の登記申請をするよう規定しています(法37)。したがってご質問の場合、地目を畑にする地目変更登記を申請しなければなりません。地目変更の登記申請をすると登記所は現地調査をおこない、畑として利用していることが認められれば、登記記録の地目は畑に変更されます。登記申請は本人でもできますが、最寄りの土地家屋調査士に依頼すれば代理人として現地確認のうえ、登記申請手続をおこなってくれます。また家庭菜園として現地を区画するような場合には、特に分筆する必要はありません。

A23.方法として、所有する山林全体の測量を行い、公図、地積測量図等の関連する資料を参考に現況と対比し、墓地の位置を特定したうえで、墓地の部分の土地分筆登記を登記所へ申請することにより登記記録は山林と墓地との二筆となり、公図上も別筆になります。

A24.不動産登記は申請により行われることになっています(法16Ⅰ)ので、原則として所有者が申請をしなければ地目や住所が変更されることはありません。あなたは住宅を建築する目的で農地(この場合は畑)を買い、その時点での住民票を添付して所有権移転登記をしたわけで、登記をした時点では現況も登記地目も畑であったはずです。あなたはその後、取得した土地に住宅を建てたのですから、建物の登記をすると同時に、土地についても宅地とする地目変更の登記をする必要があったわけです。不動産登記法は地目に変更があったときは、一月以内にその旨の登記申請をしなければならないと規定しています(法37Ⅰ)。また、住所についても市役所などに住所移転の届出をしたとしても、登記された住所が自動的に変更されることはなく、登記記録を現在の住所に直すためには、変更を証する書面として住民票を添付して住所変更登記の申請をすることになります。地目変更登記と住所変更登記の手続費用ですが、地目変更登記は所有者に課せられた義務であり、住所変更登記は自由ですが所有者自身の権利保全のためでもあるので、あなたが負担すべき費用であろうと思います。なお、土地分筆登記は、隣地所有者の通路拡幅が目的であり、あなたはそれに協力するわけですから、土地分筆登記の費用を隣地所有者に負担をしてもらうことにしたのは賢明な方法といえるでしょう。

A25.地目の定め方としては、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異の存するときでも、土地全体としての状況を観察して定めるものとし、23の地目に分類されています(規則99)。そして宅地とは建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地と定義(準則68)されており、建物が取り壊されて更地になっていたとしても他の利用目的に供されたと判断されない限り地目は宅地として見ることになります。さて、ご質問の土地ですが、あなたが今後どのように管理してゆくかによって判断が異なってきます。竹林と化した土地をそのまま放置するのであれば、それは宅地とは言えず、山林と判断することになると思われますので、この場合は山林として地目変更登記手続をすべきと考えます。ただし、あなたが竹林と化した土地を肥培管理して竹木あるいはタケノコの採取を目的に耕作してゆくことになれば、それは山林ではなく畑と判断することになります。いずれにしてもあなたがご質問の土地を今後どのように管理するかによるものと思われます。

A26.ご質問は、農地(田や畑等)を宅地として利用することを目的に農地法上の許可を取ったのだと思います。宅地の許可を取ったのに登記記録上なぜ農地なのかとの疑問ですが、それは地目変更登記をしていないからです。農地法の許可は、宅地にしても良いというものなので、許可を得たからと言って直ちに宅地になるわけではないのです。宅地とは、建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地と定義されています(準則68③)。したがって、農地法の許可を得たからと言って即宅地となるのではなく、建物を建てるなどして初めて宅地と認められるのです。そして、登記記録の地目を宅地とするためには地目変更登記を申請し、それが登記されることによって登記記録上宅地となるのです。

地積に関すること

A27.登記記録の面積と実測面積が相違しているとのことですが、その原因として次の場合が考えられます。

①当初から相違していた場合
②当初は一致していたが、土地の一部が流失等により相違してしまった場合

①の場合には、土地の所有者又は所有権の登記名義人は土地地積更正登記を申請することになります(法38)。この場合、通常隣接地との筆界確認が必要となりますので、その旨の書面とともに、地積測量図を添付して申請します。②の場合には、土地の所有者又は所有権の登記名義人は土地地積変更登記を変更があった日から一月以内に申請しなければなりません(法37)。この場合、①の申請添付書面とともに、地積が変更した原因を証明する書面を添付します。

A28.測量図の無い土地を買われたとのことなので、登記記録面積で購入されたものと判断しお答えします。土地区画整理事業等による面積が登記記録に記載されている場合には一致しますが、登記記録面積が実測面積と相違していることはよくあることで、面積が少ない原因としてはもともと登記記録面積より実面積が少ない土地を購入したのかもしれません(縄伸び・縄縮みについては別項を参照してください)。何れにしても、専門家である土地家屋調査士に相談のうえ、現状の敷地実測面積が購入面積と比べ少ない原因を調査し、最終的に敷地の実測面積を登記記録面積と合致させることをお勧めします。

A29.私道の面積が、登記記録面積と実測面積と相違しているとのことですが、これは分譲地として分筆した時期とも関係します。平成16年以前の分筆方法は、宅地部分の土地だけを求積し、私道の面積は登記記録面積から宅地の合計面積を差引きで求めた(いわゆる残地求積であった)ために、私道の登記記録面積と実測面積で差異が生じる場合がありました。平成17年以降の分筆方法は、原則として全ての土地(私道も)を求積(いわゆる全筆求積)する方法に改正され、登記記録面積と実測面積が合致することになります。 ご質問の内容からしますと、以下の状況で平成16年以前に分筆された分譲地と思われます。

①建設会社が広大な土地を買い取った。
②この段階で、すでに登記記録と実際の面積が一致していなかった(登記記録面積より実測面積が多い場合がよくあります。これを俗に縄伸びなどといいます)。
③この土地を区画割し何個か何十個かの宅地部分を区画求積し、登記記録面積から宅地面積の合計を差し引き、残りの面積を私道面積とすると当然登記記録面積と実測面積とはくい違ってきます。

したがって、会社のいうY㎡は実測の私道面積と思われます。なお、私道が建築基準法上の道路位置指定を受け(当然に受けているものと思います)、宅地の区画割がされていれば、登記記録面積と実測面積との不一致があっても、その私道に接して区画された土地には家を建てられます。 以上のような理由から面積の相違が生じているものと思われます。 なお、私道持分については、会社の言う持分で移転登記を受けておくことをお勧めします(縄伸びについては別項を参照してください)。

A30.かなりの傾斜地とのことですが、測量は可能です。土地の面積は、傾斜部分を水平投影面積(すいへいとうえいめんせき)により定めます(規則100)。水平投影面積とは、その土地を真上から見たときの面積(上空の飛行機から真下を見た状態)で、当然のことながらその傾斜地の傾斜面積よりも水平投影面積の方が小さくなります。その水平投影面積により地積測量図を作成し、分筆登記を申請します(分筆登記の方法については別項を参照してください)。

A31.実測面積と登記記録面積とを比較して、実測面積が登記記録面積より多い場合を縄伸び(なわのび)といい、逆の場合を縄縮み(なわちぢみ)といいます。一般の人は、登記記録面積と実測面積とは一致しているものと思いがちですが、次の場合を除いては、全ての土地が一致しているわけではありません。

①土地区画整理事業を実施した区域の土地
②国土調査事業を実施した区域の土地
③土地改良事業を実施した区域の土地
④登記所備付地図作成作業を実施した区域の土地
⑤分筆登記の際に求積された土地  等

以上の作業区域内の土地のように実測面積が登記記録に記載されている場合を除き、昔からの土地(元筆)は一致していないことが多いのです。では、なぜ一致していないかについてご説明します。登記記録に記載されている地積の歴史的由来は、明治政府が租税徴収を目的として地租改正を行いましたが、この時代に作成された図面に基づいて台帳上の面積が決まり、その後、幾多の変遷を経て現在の登記記録になりました。当時は測量技術のレベルも低く、また直接担当した人々が税徴収対象の国民でもあり、いろいろな思惑も介入し、実際の面積より少なく計測された経過があるようです。縄伸びという言葉は、測量の際使用した特別製の縄などに、一定間隔の結び目をつけこれを測尺代わりに用いたことに由来しています。縄の場合、強く引くと多少の伸びが出てしまうことにもなり、またこの結び目の間隔を多少長めにして用いたケースもあったようです。その結果、実際の面積より小さく計測された土地の面積が現在に引き継がれて、今でも縄伸びの土地が存在することになります。

A32.不動産登記法は土地の表示の登記事項を所在、地番、地目、地積と定め、そのうち地目を23種類に区分しています(規則99)。ご質問の沼は、登記上は「池沼」と記録されているかと思われます。この沼を埋め立てるにあたり、法律上の規制があるか否かとのことですが、たとえば都市計画法、自然公園法、緑地保全関連法などの規制が考えられますが、具体的には沼の所在地の市区町村役場に確認するとよいでしょう。また、測量することができるかとのことですが、もちろん測量は可能です。測量の方法は、沼の周囲から測量したり、水上から測量したり、種々工夫して沼の面積を確認することができますので、その専門家である土地家屋調査士にご相談されることをお勧めします。

分筆・合筆に関すること

A33.分筆とは1つの土地を複数の土地に分割して登記することです。登記所では、分筆登記をすると分筆後の新しくできた土地に対して地番を付し、その土地の登記記録を作成し、分筆時に提出された地積測量図を備えつけます。それでは、分筆の手続として、どのような手順になるのかについてご説明します。まず分筆登記のための具体的な手順として、資料収集、現地調査測量、境界立会確認、境界杭埋設、筆界確認書取り交わし、地積測量図の作成、登記申請書の作成、登記申請の手順になります。この中の筆界確認書は、登記所、市区町村役場、土地区画整理事務所等で資料を収集し、土地の筆界について隣接地所有者と立会、確認した事実を記す書面です。土地が官有地(道路・水路等)に接しており、境界が確定していない場合には、官有地の管理者と境界立会をして官地境界確認書を取得します。立会の結果、民地・官地との境界が確定したら境界杭を埋設し、筆界確認書を取り交わします。以上のような書類を添付して分筆登記を申請しますが、分筆登記については筆界の探索、測量技術など専門的な知識、測量機器が必要となりますので、この分野の専門家である土地家屋調査士に依頼されるようお勧めします。

A34.分筆登記は、共有者全員からの申請が必要となります。三女の方については、現在の住所と登記上の住所が相違しているとのことですので、分筆登記の前に住所変更登記を申請することをお勧めします。この住所変更登記申請には、登記上の住所から現住所までの変遷の判明する書面(日本国内在住の場合は住民票、戸籍の附票など)が必要となりますが、三女の方はアメリカ在住とのことですので、日本在住時の住民票、戸籍の附票とともに、居住国の日本大使館や領事館で在留証明書を発行してもらう必要があります。なお、アメリカで数回にわたり住所を移転している場合は、在留証明書に住所の履歴を記載してもらうと良いでしょう。また、分筆登記申請については、申請書又は委任状に、申請人全員(ご質問の場合は、共有者全員)の記名押印が必要(令16,18)ですが、署名した場合には押印はなくとも差し支えありません(規則47③、規則49I②)。

A35.土地の分筆登記申請に限りませんが、登記申請の際、申請人の現在の住所と登記されている住所が違うときには、申請人と登記名義人との同一性を証明する必要があり、登記上の住所から現在の住所までの変遷を証する書面を添付して申請する必要があります。最も簡単な場合は住民票を添付すれば良いのですが、ご質問のように数回住所を移転されますと、前々の住民票の除票が取れないことがあります(住民票の除票はこれまで 5 年を経過すると原則廃棄されてしまっているからです(旧住民基本台帳法施行令34条 1 項))。このような場合、本籍地の市町村役場から戸籍の附票を取り寄せてみたらいかがでしょうか。戸籍の附票には、原則としてその本籍を定めた時からの住所がすべて記載されているからです。 ただし、転籍をした場合や戸籍が改製されている場合等は、転籍前又は改製前の戸籍の附票を取ることになりますが、住民票の除票と同様に 5 年経過すると、廃棄されてしまっていることがあります。このように、住民票、住民票の除票、戸籍の附票などでどうしても住所の変遷が証明できないときには、現在の住民票とお手持ちの権利証(コピーを提出し、原本は返してもらう)を登記所に提出すれば、分筆登記の申請は受理されるものと考えます。ただし、この場合、分筆後の土地も登記は古い住所のままとなります。ご質問は、土地の分筆登記をされるとのことですが、そうであれば折角住所の変更を証明する書類を揃えるのですから、30年前の住所のままで分筆登記をするより、前もって現在の住所への変更登記手続をすることをお勧めします。なお、廃棄処分により住所の履歴が証明できなくなることの不便さから、令和元年 6 月12日住民基本台帳法施行令の一部改正がされ、同年 6 月20日から施行となり、住民票の除票や戸籍の附票の除票の保存期間が150年と改められました(同施行令34条 1 項)。したがって、今後150年間は住所の履歴の証明が受けられないということはなくなりましたが、住所移転などがあった場合は、できる限り登記記録の住所を現在の住所に変更しておくことをお勧めします。

A36.まずお答えの前提としてご質問の内容について整理します。

①相続税を納めるため、自宅の裏山の一部を売ることにした。
②亡くなった父の名前で分筆することができるか。
③相続人の中に16歳の妹がいる。
④裏山の一部だけの相続登記は可能か。
以上が本問の要点と思われますが、それぞれの項目についてご説明します。

①裏山の一部を売る場合は、売却する土地の部分の分筆が必要です。
②亡父の名前のままでの分筆ですが、相続人全員からの分筆登記申請は可能です。相続人からの分筆登記申請については別項を参照してください。
③妹さんは未成年ですが、16歳で意思能力があるものと推定され、妹さんを含め相続人全員での分筆登記申請は可能と考えます。
④裏山の一部だけの相続登記は可能かについてですが、分筆した後であれば、売却予定地だけの相続登記は可能です。裏山の残りの土地を含めほかの相続財産については、別途考えればよいと思います。

A37.分筆登記の申請は、土地の所有者が死亡している場合、原則として土地所有者の相続人全員から申請しなければならず、相続人のうちの一人では分筆登記の申請をすることはできません。また、相続人が申請人になる場合は、分筆登記の添付情報として相続人であることを証明する書面(被相続人の除籍謄本、除住民票及び相続人全員の戸籍謄本、住民票等)が必要になります。あなたが一人で分筆登記申請をする場合は、他の相続人から書面による委任状を添付して申請することになります。なお、例外として相続人のうちの一人からでも分筆登記申請ができる場合があります。それは分割方法の分かる地積測量図等が添付されている遺産分割協議書などによって、分割後の土地を相続することが明らかにされている場合です。

A38.東側土地の地目によって異なりますので、いくつかに分けてお答えします。

①東側土地が宅地である場合
特別の手続を必要とせず、東側土地の必要部分を倉庫敷地として使用することができます。ただ、倉庫敷地を特定する意味から、拡張部分の分筆登記をお勧めします(分筆登記については、別項を参照してください)。

②東側土地が農地である場合
東側土地から拡張部分を分筆のうえ、拡張部分について農業委員会への農地転用許可申請(又は届出)が必要になります。農地転用許可後、その部分を貸すことができます。また、使用後には宅地への地目変更登記が必要です。

③東側土地が宅地、農地以外である場合
東側土地から拡張部分を分筆し、使用後には宅地に地目変更の登記が必要です。
以上の敷地拡張にあたり、別途建築基準法・都市計画法等の手続が必要となる場合がありますのでご留意ください。

A39.数個ある土地を合併し一筆(一個)の土地にすること、これを合筆登記といいますが、ご質問の場合は合筆登記をすればよいと思います。ただし、合筆登記をするためには要件がありますが、次に述べるような土地同士の合筆登記はできません(法41)。

①相互に接続していない土地
②地目又は地番区域が相互に異なる土地
③表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる土地
④表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする土地
⑤所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地
⑥所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地(ただし例外があります(規則105))
以上のように、あなたが所有される土地が合筆登記の要件を充たしている場合には、一筆にすることができます。

A40.ご質問の五筆になった土地の全部を元の一筆にできるかとのことですが、建築後退線として分筆した二筆については、現況が道路であり、合筆の要件を欠くことになりますので、分筆した五筆を一筆に合筆することはできません。したがって、建物を建築する敷地の三筆を一筆に合筆することになります。建物ができたら、その土地の地目が宅地以外であれば宅地に地目変更の登記をし、また現況道路になった土地は、公衆用道路に地目変更の登記をすることになります。なお、合筆するためには要件がありますので、別項を参照してください。

A41.合筆登記についての必要書類は、権利証、申請人の取得後3カ月以内の印鑑証明書です。必要書類としての権利証は、合筆する土地全部が必要ではなく、そのうちのいずれか一筆で合筆は可能です。従いまして、ご質問の相続時の権利証があれば三筆の合筆登記は可能であり、合筆登記完了後には合筆後の権利証(登記識別情報)が発行されます。なお、権利証の再発行はできませんので、ご注意ください。では、紛失・焼失等により権利証が一切ない場合には合筆登記ができないかというと、次の方法のいずれかにより合筆登記は可能です。

・登記所による事前通知(法23Ⅰ)
①権利証を添付せずに合筆登記を申請すると、登記所が申請人本人の登記上の住所宛に申請に間違いがないか確認するための事前通知書を発送(本人限定受取郵便)します。
②申請人本人が上記事前通知書を受取り、署名し実印を押印して登記所に提出すると登記が実行されます。

・合筆登記申請代理人である土地家屋調査士に「本人確認情報」を作成してもらう方法(法23Ⅳ①)
①申請代理人である土地家屋調査士が、申請人本人について厳格に確認した書面を添付し、登記官がその内容を相当と認めれば、事前通知を省略し登記が実行されます。
・公証人の認証がある書面を添付して申請する方法(法23Ⅳ②)なお、権利証についての詳細は別項を参照してください。

A42.この場合、2つの手続が必要となります。まず払い下げになった旧水路の地目が雑種地となっているのを、宅地に地目変更登記をします。その上で、これまでの宅地と合筆の登記申請手続をすればよいのです。なお、合筆登記をするためには要件がありますが、合筆要件の詳細については、別項を参照してください。また、合筆登記に必要なものは、合筆する土地いずれか一筆の登記済権利証(登記識別情報)、申請人の印鑑証明書 1 通が必要であり、申請書(土地家屋調査士に委任する場合は委任状)に実印を押印します。そして申請には登録免許税として合筆後の土地一筆につき千円課税されますので、これは一般的に収入印紙で納めています。合筆後の地番は、原則として合筆する土地の首位の地番(一番若い地番)が新しい地番となります(準則67Ⅰ⑥)。ただし、合筆後の地番が住所の地番と相違するなど不都合があるようでしたら、その理由を記した書面を添付して申請することで合筆する土地の中から他の地番を使用することもできます(準則67Ⅰ⑦)。

境界に関すること

A43.日常的に広く境界という言葉が用いられますが、土地は元来自然状況下においては、連続しており区画されていません。しかしながら、租税徴収上あるいは取引上その土地の範囲を特定する必要が生じ、これを人為的に区画しました。明治時代の地租改正や不動産登記法では、その区画された土地にそれぞれ地番を付し(法35)、土地同士の境界を筆界と定めました(法123①)。こうしてできた筆界が公法上の境界と呼ばれるものです。これに対し、所有権の及ぶ範囲を所有権界といい、私法上の境界と呼ばれます。土地家屋調査士が法律的観点から厳密に使い分けているものは、所有権界と筆界であり、観念的には全く異なるものです。所有権界と筆界とは、その成立過程から元をたどれば同じ境界でしたが、後発的原因によって、必ずしも一致しなくなっていることがあります。また、所有権界と筆界との違いについては、所有権界は移動が可能であるのに対し、筆界は所有者といえども勝手に移動することはできません(最高裁判例)。次に、それぞれの境界についての発生原因は以下のとおりです。

所有権界の成立
①明治 5 年太政官布告50号による所有権と所有権界の創設
②時効取得等により新たに形成された所有権の及ぶ範囲

筆界の成立
①明治時代の地租改正事業による地番の創設(原始筆界)
②土地表題登記、分筆登記、合筆登記等により新たに創設されたもの(創設筆界)
③土地区画整理事業等(創設筆界)
④境界確定判決による境界の確定(法148)
⑤その他

A44.ご質問の土地はいつごろ買った土地か不明ですが、測量図はお持ちでしょうか。お持ちか否かの2つのケースに分けてお答えしますが、境界を復元し、境界杭を埋設するには、紛争を未然に防止する観点から、必ず隣地所有者の立会を得て同意を得たうえで復元するようにしてください。

測量図をお持ちの場合
その測量図をもとに復元することが可能と思われます。ただし、その場合でも登記所の地図・地積測量図等を取り寄せて照合してみてください。一致していればそれらの図面もとに復元が可能です。

測量図がない場合
まず、境界復元のために以下のような証拠資料並びに証言を基に境界を復元し、境界杭を埋設します。
①登記所での地図・関連する地積測量図・登記事項証明書・土地台帳などの資料
②土地区画整理事業・耕地整理事業等の資料・測量図
③現地地形・地物・構造物の確認
④関係者の証言
⑤双方の占有状態からの判断
⑥合理的総合的判断
いずれにしても、境界を復元し境界杭を埋設することは、綿密な調査と高度の測量技術を要することから、境界の専門家である土地家屋調査士に依頼するようお勧めします。

A45.不動産登記法では、連続する土地を人為的に区分して一つの区画を作り、各々に番号すなわち地番を付けています。そして、一つの地番の及ぶ範囲を一筆の土地といい、一筆ごとに区画された土地の境界を筆界といいます。この筆界は、ある土地と隣接する土地とを区分する公法上の線で、たとえ隣接する土地所有者と合意しても筆界を勝手に移動させることはできません。したがって、筆界は、明治時代の地租改正事業、土地区画整理事業等により、最初に地番が付されたときや、後に合筆、分筆によって新たに地番が付されたとき以外は定められることはないのです。そのようなことから原則として筆界と現地における占有界(所有権界等)とは一致しているはずなのですが、場合によっては筆界とは別の位置が境界として占有されている場合があります。このような場合、それを筆界と誤認しないように注意しなければなりません。そこでご質問の場合には、隣地との境界に公図を基に境界杭を入れたいとのことですので、公法上の境界(筆界)を現地に復元する必要があります。そのための資料として登記所で公図(旧土地台帳附属地図)又は地図(法14)を取得します。しかし、細かな寸法は入っていませんので、その他地積測量図、占有管理状況、関係者の証言、近隣の境界標識、地形、登記記録との対比等を総合して決める必要があります。なお、このような方法により復元しても隣接地所有者の了解が得られない場合には、筆界特定制度を利用するか、境界確定訴訟手続により筆界を決めるかの何れかの方法によることになるでしょう。

A46.民法第225条第 1 項は、二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができると規定しており、隣家との境界線上に塀を設置しようとする場合には、まず塀の高さ・材質・形・費用負担などについて、隣家の人と十分に話し合いをすることが重要です。またお互いの境界線の確認も必ず行ってください。協議をせずに設置したことにより隣家とのトラブルの原因になる例もありますので十分な注意が必要です。万一、協議が成立しないときは民法第225条第 2 項の規定により、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ2メートルのものはできるとしても、ブロック塀の設置はできないものと判断します。ただし、自分の敷地内に自分の費用で造る場合は、建築基準法等他法令や条例に反しない限り材質にこだわらず、また高い塀も可能ですが、隣接者に対し、日照や通風問題で悪影響を与えることが想定されますので、十分な配慮が必要と思われます。

A47.ご質問では、杭が無くなっているのですから売却するのであれば隣の地主から境界復元の立会要請があるかもしれません。もしそれがないとなれば、後日の境界紛争防止のためにも良い機会と捉え、境界を復元する協議の申入れをしたらいかがでしょうか。境界復元のための調査、測量をして境界杭を入れること、また実測図を作成することなどは土地家屋調査士の専門とする仕事ですので、土地家屋調査士に依頼して処理することをお勧めします。

A48.境界杭を入れ替える場合は隣接地所有者と協議のうえ同意を得なければなりません。プラスチック杭であっても隣接地との境界標であるからです。境界杭入れ替えの同意が得られたら、その境界杭の位置を正確に測っておく必要があります。ただし、入れ替えについては高度の技術が必要ですので、境界の専門家である土地家屋調査士に依頼することをお勧めします。

A49.土地の筆界は、明治時代の地租改正事業、土地区画整理事業、土地分筆・合筆登記等により決められたもの(公法上の境界)で、双方の合意があったからといってそれだけで直線に変更できるものではありません。後々紛争が生じないために、法に則した手続をとられることをお勧めします。まず、双方が合意したとおりに境界を直線にするためには、土地分筆登記が必要となります。手続としては、双方の土地について測量し、お互いが相手に利用させる部分を元の土地から分割します。分割した土地にはコンクリート杭などの境界標を埋設し、筆界を明確にしましょう。そして、土地分筆登記をすることにより登記記録にもその変遷が記載され、地積測量図も登記所に保管されることになります。次に、あなたが利用する部分と相手が利用する部分とを、交換を原因としてそれぞれ所有権移転登記手続を行います。その結果、双方の所有地の筆界は直線となります。

A50.ご質問の境界杭は、あなたの土地と北側の土地との境界と同時に道路との境界を示す杭であると思われます。その杭を真っ直ぐに直すには、まず正しい境界の位置を確認できる図面(測量図等)を取得する必要があります。その図面とは、耕地整理時の図面、道路管理者である市役所の道路台帳図、あなたの土地と北側の土地の地積測量図、公図(法14条地図)などが考えられます。耕地整理時の図面は、耕地整理の時期にもよりますが市役所または耕地整理地内のどなたかが保管しているかもしれません。道路台帳図は、市道の場合は市役所が備えることになっている(道路法28)ので市役所で確認するとともに、地積測量図はあるかどうかは分かりませんが登記所で確認してください。図面が探せたら北側の土地所有者の立会を求め、図面に沿って境界杭を真っ直ぐに直し、同時に道路台帳図と齟齬がないかを市役所の立会を求めるなどして必ず確認を得てください。ここで注意すべきことは、立会いを求めずに境界杭を動かしたことで、境界紛争になっている例はたくさんあるので、関係者の立会は必ず求めて実施してください。境界杭を直すということは大変難しく高度な技術が必要ですので、境界の専門家である土地家屋調査士に依頼されることをお勧めします。

A51.話し合いをして解決できないということは、あなたと隣地所有者との境界線の認識が相違しているからだと思われます。このような場合、あなたの土地と隣地との境界がどこなのか、ブロック塀がいつ建てられたのか、ブロック塀を建てる位置はどうして決められたのか、その時立会を求められなかったのか、ブロック塀が建てられてからどのくらいの期間が経過したか、などいろいろな情報を聴取・勘案して、実際越境しているのかどうか、越境しているとすればどのように解決したら良いかを検討する必要があります。そのようなことを相談できる機関として、埼玉土地家屋調査士会の境界問題相談センター埼玉(以下「センター」という。)があります。センターでは、土地家屋調査士と弁護士が協働してこれらの相談を受けること、そして相手方にも出頭を求めて話し合いにより解決する調停も行っています。隣同士でもあることから、センターを利用して円満に解決するようお勧めします。

Q52.境界杭を抜かれてしまったということですが、どのような事情で抜かれてしまったのか、あるいは何かの事故により偶然に亡失したのか、確かな原因を確認する必要があります。また、隣地所有者立会いのうえ境界杭を入れたとのことですが、専門家に依頼して、両所有者立会いのうえ境界杭を埋設したのか、あるいは両所有者だけで境界杭を埋設したのかにより判断は違ってきます。

① 専門家に依頼した場合
その際、測量図面を添付した筆界確認書を取り交わしていなかったでしょうか。もし、その筆界確認書がある場合には、当時の専門家に依頼し境界杭を復元するようにしてください。

② 両所有者だけで埋設した場合(専門家に依頼していない場合)
一般に土地の筆界は登記所に保管されている公図等の資料をもとに確定することになりますが、両所有者立会いの下に筆界を確認し埋設したものであれば元の位置に復元したらよいと思います。境界杭は各土地の筆界を示す大事なものですので筆界の専門家である土地家屋調査士に依頼されるようお勧めします。

A53.平成19年に敷地を測量したのは、土地家屋調査士が行ったものと推定して回答します。まず、隣地所有者に連絡をして、関係者と現地で立会い、現地を再確認したうえで境界杭を元の位置に復元すべきです。その際、平成19年に測量した土地家屋調査士に連絡し、復元作業の依頼をするようお勧めします。費用については、原因者が誰であるかによって負担割合が違ってきますが、ご質問のとおり隣地のビル工事で不明となったのであれば、第一に隣地所有者が負担すべきものと考えます。なお、境界杭の保存に関しては、土地所有者又は利用者の責任(民223,224)で行うことが原則ですのでご承知おきください。

A54.隣地との境界については、近年非常にトラブルが多くなっています。何かの手違いで連絡が届かなかったことも推測されますので、まず相手方に事情説明を求めることをお勧めします。そしてその上で入れ替えられた境界杭が元の位置に埋設されているかをも確認する必要があると思います。また、その説明に納得できない場合は、 5 年前に測量したときの関係者に、現地で立会を求め、原因を究明し、解決することが必要です。
(参考)
境界標を損壊、移動、除去し、境界を認識することを不可能にした場合は、境界損壊罪として罰せられます(刑法262ノ2)。勝手に入れ替えるなど境界の認識が可能であっても器物損壊罪(刑法261)が問われる恐れがあります。

A55.現在のあなたの占有部分と市役所が明示した道路境界に1m以上もの差異があったので非常に不満だということですが、道路境界の根拠を市役所側に確認することがよいと思います。数値の入った図面等があるのか、公図が根拠なのか、過去の使用状況はどうだったのか、明治初年から現在までの使用状況に変化があったのかなど道路境界を示す根拠を確認し、納得のいく答えを得ることが良いと思います。同時にあなたの土地の境界が確認できる図面などがあれば、それを示して市役所と協議することが良いと思います。

A56.土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線を筆界と言いますが、ご質問は、あなたの所有する土地の筆界を明らかにしたいというものと思われます。筆界は、公法上の境界とも言われ、所有者同士の合意などで変更することはできません。そこで、筆界を明らかにするための制度の一つとして筆界特定制度があります。この制度は、土地の筆界について、裁判所ではなく、法務局の筆界特定登記官が外部専門家である筆界調査員として任命された土地家屋調査士等の意見を踏まえ、現地における筆界の位置を特定する不動産登記法上の制度です。この制度を利用することにより、公的な判断として筆界を明らかにすることができるため、筆界を巡るトラブルを迅速に解決することができます。境界には公法上の境界(筆界)と所有権界とがあり、筆界特定制度は公法上の境界を特定するための行政制度であり、境界の専門家である土地家屋調査士、筆界特定登記官が関与し特定しているので、あなたの場合、筆界特定制度を利用して、隣の所有者との筆界を明らかにする方法を取られるのが良いと思います。

地域慣習

A57.境界の専門家として土地家屋調査士は、日々境界についての研鑚を積んでいますが、境界確認のための資料として、公図、(地積)測量図、登記事項証明書をはじめ、現地の物理的状況、所有者・利害関係人の証言等のほかに地域の慣習も境界を決定するための重要な要素となるため、可能な限り収集、聴取しています。土地家屋調査士は、その業務を行う地域における土地の筆界を明らかにするための方法に関する慣習その他の土地家屋調査士の業務についての知識を深めるよう努めなければならない(調25Ⅱ)として、地域慣習にも精通するよう規定されています。日本土地家屋調査士会連合会では、会長名で平成16年に全国の土地家屋調査士会に対し、「土地家屋調査士法第25条第 2 項に規定する「地域慣習」に関わる地図等の歴史的資料類並びに慣習等の調査依頼と報告方について(依頼)」を発し、全国での調査を実施しました。

A58.埼玉県における境界に関する地域慣習について、平成16年に埼玉土地家屋調査士会各支部が調査・研究し、報告された資料から抜粋したものを次に記しますので参考にしてください。

(1)上尾支部の報告
桶川市、鴻巣市には芯杭台帳があり、現在でも閲覧可能である。これは道路の中心に炭を埋め込んでおくもので、長年にわたって腐蝕することもなく、長持ちするので道路境界を確認するには大変好都合と言うことである。

(2)飯能支部の報告
飯能市のある地域では、桑の木の植え方で境界を定めるという方法「西北境」の風習がある。これは所有地の西側、北側の境界線上いっぱいを所有者が管理する。したがってそこに植えてある桑の木が境界であるということである。古老はこれを評して『西北を守れ』と子孫に伝えたと聞いている。また、同市のある地域では、『縁木』(へりっき)という境界を示す木の植え方がある。この場合の境界木は杉、桧などの針葉樹であり、雑木林による平地林が連なっている場合の境界である。雑木林は田畑に比べ一筆の面積が大きくその境界沿いに杉、桧などの針葉樹をお互いに植え、その中間が境であるという慣習である。地番の境界を真ん中に挟み、両側に針葉樹が植えられている形となる。

(3)東松山支部の報告
「コサギリ」=(木陰切)、「コサヨケ」=(木陰除)等とばれる土地があるという。東松山市大字岩殿から鳩山町東部にかけてこの名称の土地が存在した。この「コサギリ」=(木陰切)、「コサヨケ」=(木陰除)とは谷ツ田(山間の田圃)の周囲の日陰になる部分の土地で、田の耕作者が管理しており、隣地の山林との境に境木があり、公図上は山林に含まれている様相を呈しているが、法務局は無地番の土地として、表題登記の対象となった。

(4)草加支部の報告
「両新田」についての報告である。これは市右衛門新田と彦右衛門新田を示すものであるが、江戸時代の「新田開発」により耕地として開発されたものである。現在の町名である「両新田東町」、「両新田西町」には新田開発の経緯から飛び地があり大きな影響を地域住民に与えている。公図上でも隣接している地番の町名がどちらなのか、普段から慣れ親しんである土地家屋調査士でさえ慎重な検討を要するといわれている。

(5)志木支部からの報告
野火止開発、三富新田開発についての報告である。野火止は、多摩川上水を分派して現在の新座市まで水を引いた、野火止用水に沿った新座市の菅沢・野火止・北野地区に見られる短冊状の開発地で、資料によると、当時は全く同型の土地を分与され、その内容は一軒に与えられた土地は幅7.5間(13.63m)長さ480間(872m)、そのうち4段を林とし、残り4 段を宅地および田畑としたと記されている。三富新田開発の、三富とは、上富村、中富村、下富村の三か村の総称である。現在の所沢市富岡地区から三芳町上富に渉る区域を開発した。その内容は、 4 間(7.2m)と 6 間(10.9m)の道路を縦横に造り、この道路に面して間口40間(72m)奥行き375間(681m)面積 5 町歩(約 5 ヘクタール)の短冊状の地を一戸分として区割りしたものである。これを道路側から宅地、耕作地、山林の順に区切り一戸ごとに耕作道を畑の中央につけ、その畦には「卯木」(うつぎ)を植えて境界とした。現在は国土調査が行われ、境界等も確定しているが、江戸時代から土地の境界に関しては他の地域より明白に示されていたものと推察される。

(6)埼玉県にみられる境界標
埼玉県にみられる境界標は、三富新田開発の影響なのか、畑の境界標はウツギ、茶の木が多く見られ、雑木林の中ではヒノキ、スギ等が見られる。また非常に区別が難しいが、ウシコロシ(牛殺し)(クロツバラの別名)を山林の境界木としているところもある。

A59.旧鳩ヶ谷市(現川口市)及び同市に隣接する川口市には、根除堀の記載のある土地があります。昔の土地台帳には「内歩」、「外歩」の区別のある土地があり、この根除堀は「内歩」として記載されています。現在の登記記録では、原則として「内歩」、「外歩」の区別は記載されていませんので、境界確認の際は注意が必要です。根除堀とは、農地の一部であり、登記簿改正前の表題部には、〇〇番 畑  5畝2 歩 内29歩 根除堀 という振り合いで記載されています。根除堀は、畑と山林との境界が接しているときに畑の一部を 3尺から 6 尺くらいの幅で掘り、山林の木の根や、草の蔓、笹の根などが畑に侵入しないようにしたものと思われ、この根除堀は当然に畑の一部ですが、道路等に使用されていたことなどもあり、長年経過した後には境界の争いになることも珍しくないそうです。根除堀は、和紙の公図を見ると、山林と接する畑の部分に帯状の薄い緑色で着色されています。ただ、着色した周囲に実線を施している地域もあり、また色合いも黄緑色となっているものもあります。和紙の公図は、道路を赤色、水路を青色、根除堀を薄い緑色などと色分けがなされていたが、現在は和紙の公図をトレースしてマイラー化したため、着色はされなくなってしまいました。さらに法務局から取得した公図は、デジタル化され、根除堀は畑に沿って道路があるように見える状態で現在に至っており、境界の確認の際は注意が必要となります。

建物についてのQ&A

表題登記に関すること

A60.家屋の新築登記(建物表題登記)は、完成後一月以内に登記をするよう不動産登記法で定められています(法47)。長い間登記をしないでおくと、いざ登記となると大工さんが死亡してしまっていたり、転居して転居先が分からなくなってしまうなど建築主があなたであるとする大工さんからの証明書が取得できなくなってしまうなどの問題も起きてしまいます。また登記申請にも新築時より複雑な添付書類が必要となり、現場調査にも時間がかかる場合が多く、費用も嵩むことになります。最悪の場合は他人名義に登記され、さらに売買されてしまい、取り戻すのに裁判費用やら場合によっては買戻し費用も必要となるなど大変な事態にならないとも限りません。また、建替えなどの場合には、新築の登記とともに取り壊した家屋も一月以内にその旨の登記(滅失登記)をしなければなりません。

A61.建物を新築した者は一月以内に登記を申請しなければならないと不動産登記法第47条に定められています。その建物の表題登記を申請する際、建物が確かに申請人の所有であることを証明する書類を添付する必要があります。その所有権を証明する書類(※参照)としては、建築確認済証、検査済証、建築業者の建物引渡証明書、その工事代金受領書、借地であれば地主の証明書等が該当し、所有権を証明する書類が多いほどその信ぴょう性が増大するわけです。ご質問の建築した大工さんが死亡しており、その証明書が添付できないとのことですので、この場合は大工さんの証明書の代わりに建物の固定資産税領収書、電気の領収書、水道の領収書、家屋の火災保険証書等を添付して建物表題登記を申請することになります。また借地の場合は、地主の証明書があればそれも添付してください。さらに申請人が、10年前にどこの大工さんに建築してもらったかを記載した上申書(領収書があればそれも添付)を添えて申請すればよいと思います。
※建物を新築し、表題登記を申請する場合には、所有権を証明する書類を添付(令別表12項)することになっており、その証明書は次のような書面をいう。

①建築基準法第6条の規定による確認済証
②建築基準法第7条の規定による検査済証
③建築請負人の引渡証明書
④固定資産税納付証明書または固定資産課税台帳登録事項証明書
⑤建築請負契約書および工事代金領収証
⑥敷地所有者の証明書
⑦敷地所有者との賃貸借契約書
⑧隣地居住者の証明書

A62.ご質問の建物を登記する場合、親子で資金を出し合い建築するのですから共有名義で登記することができます。ただ、建物が玄関、浴室、洗面所、台所も別々に設けられ、おのおの独立した構造と思われますので、専門的になりますが、区分建物として登記する方法もあります。区分建物とはマンションのように一棟の建物において個別に専有する範囲がはっきり区分されている建物をイメージしていただければよいかと思います。分かりやすくいいますと、くっついているけれど別々な独立した建物ということになります。区分建物として登記をすることにより、お父様の住む建物の部分はお父様の所有として、子供さんの住む建物の部分は子供さんの所有として登記ができることになります。また、子供さんが金融機関から融資を受けるとのことですが、金融機関に担保提供する場合においても、子供さんの住む建物の部分だけを担保提供することも可能になります。もっとも、土地についてはお父様の単独所有ですので、土地全部を担保に提供することになってしまうかもしれませんが。

A63.会社と個人とが共同で建築するのであれば、建築工事完了までに建築主の名義変更届(建築基準法施行細則)をすれば良かったと思いますが、それをしないまま建築した場合であっても、実際、会社と個人とが資金を出し合って建築したのですから会社と個人の共有として登記をすることは可能です。ただし、共有として登記をする場合は、各持分を記載することになりますので、会社と個人の資金の割合を算出し、各持分を明記して申請することになります。登記申請をする際の基本的な所有権証明資料は別の項を参照していただくとして、ご質問の場合、建築確認済証の建築主が個人ですので、会社と共同して建築した旨の書面を添付して申請してください。共有で登記をする場合は、建物全体が会社と個人の共同所有となるのですが、店舗部分は会社が資金を出し、住宅部分は個人が資金を出して建築したとのことであり、店舗と住宅とはドアで仕切られそれぞれ独立した構造になっているようですので、区分建物として登記が可能とも考えられます。区分建物として認定する場合、構造上の独立性、利用上の独立性等の要件がありますが、この要件を充たしていれば店舗部分は会社名義で、住宅部分は個人名義で登記することができます(区分建物としての詳細な要件は、別項を参照してください)。資金を出した部分を考慮すれば、建物全体を共有物として登記をするよりも区分建物として登記をすることが実態に合っているものと思われます。

A64.建物の表題登記は、登記されていない建物の物理的状況を明確にする初めての登記で、建物の所在、家屋番号、種類、構造、床面積が登記されるほか、登記原因及びその日付、登記の年月日、所有者の氏名及び住所、所有者が二名以上のときは所有者ごとの持分が登記されることになります(法27,44)。そして、新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならないとして申請が義務づけられています(法47Ⅰ)。ご質問の建物は、建築後10年も経過しているのですから申請義務についてはともかく、未登記であることに気づいたのですから速やかに登記をすべきと考えます。建物の表題登記を申請する場合、建物の所有権を証明する資料を添付することになります。借地ということですので建物所有権を証明する一資料として土地所有者の証明を添付することが望ましいと思います。ただし、それが無いから登記ができないというものではありませんし、土地所有者の証明が無くても土地賃貸借契約書や地代の領収書などがあれば、それも資料の一部になります。ただそれよりも未登記に気付き、登記をしようと思われたことは実に賢明で、借地の場合、建物の登記をすることにより第三者対抗要件を備えることになりますので(借地借家法10Ⅰ)、速やかに登記をされることをお勧めします。

A65.土地を有効に利用するために木造3階建ての建物や、地下室を設けた建物が見受けられます。不動産登記上での取扱いでは、地盤面を基準として、地上階と地下階に区別され、床面が地盤面から下にある階層で、床面から地盤面までの高さがその階の天井までの高さの3分の1以上あるときは地下階として取り扱います。また、三方が地中にあっても、一方が地上に現れている場合は、地階としては認められません。がけ地などに建築して、車庫、倉庫等に利用している場合は、1階部分の扱いとなります。そこで地階として認められるような建物を造った場合ですが、1階、2階部分も鉄筋コンクリート造りで建てた場合ですと、登記記録には、鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階付き2階建と記載されます。そして床面積として1階○○㎡、2階○○㎡、地下1階○○㎡として登記されます。

A66.登記の対象としての不動産は、土地または建物をいいます(法2 ①)が、建物の登記にあたって建物として認められるかどうかの判断が必要です。建物として登記できるかどうかを判断するには、専門的には様々な判断要素がありますが、一般的には次の3点によって判断すると言ってよいでしょう(規則111)。

①容易に移動できないよう基礎に固定された定着物であること。
②屋根や外壁または建具などで外気と内気が分断されていること。
③使用したい目的に利用できる状態にあること。

それではご質問のプレハブの子供部屋ということで考えてみましょう。①についてみますと、単にコンクリートブロックなどで簡単に造られたものに建物を据え置いた程度のものでは登記はできませんが、しっかりした基礎に建物がボルトなどで確実に固定されていれば可能です。②の屋根や外壁については、この場合はおそらく問題ないと思います。③の用途性についても子供部屋ということですから問題はないと思います。以上のとおり、一般にプレハブ住宅などは登記が可能かどうかは現状を十分確認しないと判断することが大変難しく、しっかりした基礎の上に建物が固定され、土地に定着しているものであるかが登記できるか否かの重要なポイントです。

A67.建物として登記(建物表題登記)が認められる基準は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供しうる状態にあるものをいうと規定されています(規則111)。ご質問の建物はプレハブの勉強部屋とのことですが、基礎がしっかりと施されて固定されて前記基準を充たしていれば、建物としての登記は可能と考えます。建物の敷地は借地とのことですので、勉強部屋を建築するにあたっては地主の承諾を得たでしょうか。一般的に建物所有を目的に締結された土地賃貸借契約書には増改築をする場合、事前に書面による地主の承諾を得なければならないとする旨(増改築禁止特約)の条項が規定されており、承諾を得ないで建築した場合、賃貸借契約を解除される虞があるからです。賃貸借契約書を確認してみてください。

A68.温室にはいろいろあり、一律に論じられませんが不動産登記規則第111条は、建物とは、屋根および周壁、またはこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいうと規定し、登記可能の建物の要件を示しています。したがって、この要件を充たしていない屋根や周壁がビニール張りのいわゆるビニールハウスや、丸太杭やコンクリートブロックの上に置いたようなものは建物として取り扱われません。あなたの所有する温室がこの要件を充たしていれば登記は可能ですので、温室の構造をよく確認してみてください。

A69.建物と認められるためには、第一に土地に定着したものであることが必要です。すなわち、しっかりとした基礎で建物が固定され、簡単には移動、取り外しができないこと。第二には、屋根および周壁などの外気を分断するものを有することとされています。ビニールハウスの基礎ですが、骨組みの金属製パイプを地中に突き刺すものや、コンクリートブロックの上に置いたようなものは前記で述べた土地に定着したものとは言えません。また、一般的にビニールそのものは、耐久年数がおおむね1、2年と思われますので、永続性がなく、外気分断性があるものとは言えないことから建物として取り扱われません。しかし、現在ではビニールシート製品でもグラスファイバー幕材や膜に防水加工を施したものなど登記可能な製品も生産されていますので、特殊なビニールシート製品を使用している場合は建物表題登記が必要になります。

A70.改めて登記をする必要があります。しかも2つの登記申請をすることになります。焼失した建物と近く完成する建物の形状が全く同じであっても別の建物ですから新たに登記をしなければなりません。焼失してしまった建物の所有権は焼失によって消滅し、新たに建てた建物の所有権は新築によって原始的に取得するからです。したがって登記の方法としては、まず全焼した建物について焼失を登記原因とする建物滅失登記をし、次に近く完成する建物については完成後の建物の所有権を証明する資料を添付して建物表題登記をすることになります。

A71.建物を新築したときや、表題登記がない建物の所有権を取得した者は一月以内に、その建物の所在地を管轄する登記所に対して建物表題登記の申請をしなければならないことになっています(法47)。お父さんが死亡したことにより、建物表題登記はその相続人から申請することになりますが、相続人全員を名義人として相続人の一人から相続を証する書面(戸籍謄本・除籍謄本など)を添付して表題登記の申請が可能です。また、遺産分割協議が成立して、相続人のうちある特定の者が、その建物を取得した場合には、その遺産分割協議の成立を証する書面を添付してその者が建物表題登記の申請をすることになります。なお、建物表題登記を申請するにあたり、建物をお父さんが建築したことを証明する書類も添付する必要がありますが、所有権を証明する書類については、別項を参照してください。

A72.建物の表題登記を申請する場合、建物が確かに申請人の所有であるという証明書類を添付する必要があります(法27③、47)。その所有権を証明する書類の例として、建築確認済証、検査済証、建築業者の建物引渡証明書、工事代金領収書などがあります。ご質問は、工事中の建物を知人に譲ることになったとのことですが、建築工事完了までに建築主が変わる場合は、建築主の名義変更届(建築基準法施行細則)をすることで建築主を変更することができますので、変更後の建築確認済証を添付することで通常の登記手続で済むことになります。更届をしないまま工事が完了してしまった場合は、建築確認済証の建築主はあなた名義のままですので、前記の所有権を証する書類に加えて、建物はあなたから知人に引き継がれて建築されたものであるという書面(建築確認済証の建築主はあなた名義であるが実際の建築主は知人であるという内容の書面)を添付して申請します。また、建物の完成後に知人に譲渡した場合の建物表題登記申請は、あなたの所有権を証する書類に加えて、あなたが知人に建物を売り渡した旨の証明書(建物売渡証明書など)に印鑑証明書を添えて申請することになります。ところが、建築中の建物を知人に譲渡したが、建築主の名義変更届をしないまま工事が完了してしまった場合は、建築確認済証の建築主はあなた名義のままですので、前記の所有権を証する書類に加えて、建物はあなたから知人に引き継がれて建築されたものであるという書面(建築確認済証の建築主はあなた名義であるが実際の建築主は知人であるという内容の書面)を添付して申請します。また、建物の完成後に知人に譲渡した場合の建物表題登記申請は、あなたの所有権を証する書類に加えて、あなたが知人に建物を売り渡した旨の証明書(建物売渡証明書など)に印鑑証明書を添えて申請することになります。

A73.ご質問の小屋裏を利用して収納スペースとして使用したいとのことですが、いかにして建物の空間を上手に利用するかということは、大変重要なことかと思います。ところで不動産登記法は、建物を公示するために所在、種類、構造、床面積を登記することと定めています(法44)。そして床面積については、部屋の天井高により判断し、天井高1.5mを基準として、床面積に算入するか否かを規定しています(準則82①)。したがって、原則として天井の高さが1.5m以上は床面積に算入し、1.5m未満の場合には算入しません。それでは天井が斜めで、高いところは2.4m、低いところは0.5mという部屋の場合はどうでしょう。小屋裏を利用するとなれば当然、1.5m以上のところもあるし、以下のところもあるわけで、その場合は、原則として一個の部屋として全体を床面積に算入することになると思われます(準則82①但し書き)。ただし、小屋裏へ出入する構造によっては判断が分かれることになります。最後に、ご質問の建物の階数についてですが、小屋裏の納戸が床面積に算入できる構造であれば、3階建と認定し、登記をすることになるでしょう。

A74.建物表題登記はどちらの登記所に申請してもさしつかえありませんが(法6Ⅲ)、建物が数個の登記所の管轄区域にまたがる場合(法 6 Ⅱ)には、不動産の管轄登記所等の指定に関する省令(昭和50年法務省令68号)の規定により次の方法で管轄登記所が指定されます。

①建物が同一の法務局または地方法務局の管内の登記所の管轄区域にまたがって所在するときは、当該法務局長または地方法務局長が管轄登記所を指定します。例えば、さいたま地方法務局草加出張所と川口出張所とにまたがった場合は、さいたま地方法務局長が指定します。
②建物が同一の法務局の管轄区域にまたがって所在するときは、当該法務局長が管轄登記所を指定します。例えば、東京法務局管内の埼玉県と栃木県にまたがった場合は、東京法務局長が指定します。
③上記①②以外の場合は、法務大臣が管轄登記所を指定します。

以上の方法で管轄登記所が指定されることになるのですが、あなたが申請した登記所が指定されれば、そのまま登記が実行されますが、他の登記所が指定された場合は、登記申請した登記所から指定された登記所へ申請書類を移送し(規則40Ⅰ)、申請人にその旨が通知されます(規則40Ⅱ)。このことは、建物が半々にまたがっている場合だけではなく、少しでもまたがっている場合にも同様に処理されます。なお、土地の地番区域は市、区、町、村、字又はこれに準ずる地域をもって定められ(規則97)、地番は地番区域ごとに定められる(規則98Ⅰ)と規定されており、土地について管轄登記所がまたがるということはありません。

表題部変更登記に関すること

A75.不動産登記法第51条は、建物の所在、種類、構造、床面積などに変更があったときは、表題部所有者又は所有権登記名義人はその変更があった日から一月以内に変更登記を申請しなければならないと定めています。お答えするにあたり、既存建物と増築建物の所有者が同一人であることを前提とします。必要な書類は、新築登記(建物表題登記)のときに用意した書類と同種の書類が必要となります。つまり増築した建物があなたのものであるということが証明される書類です。今回の登記はすでに登記されている建物の変更登記ですので、建物表題部変更登記となるわけで、その登記に必要な所有権を証する書面は、おおむね次の書類が該当します。

①増築工事のための建築確認済証
②施工業者の工事完了引渡証明書
③施工業者の工事代金の領収書等(所有権を証明する書類の詳細については別項を参照してださい。)
お尋ねのどこへ持参し、お願いしたらよいかとのことですが、上記書類を用意したうえで、建物の登記(増築を含む)手続の専門家である土地家屋調査士に依頼して下さい。

A76.既存建物に接続して住宅を新築したとのことですが、接続して建てた建物が家の中から行き来できない構造か、有ってもドアのように各建物の密閉性が保たれていると認められる構造(構造上区分された建物)で、利用上も独立した機能を有している場合は、区分建物としてあなたの建てた建物をあなた名義で登記することは可能です(区分建物としての詳細な要件は、別項参照ください)。しかし、あなたの建てた建物と既存建物とが廊下や部屋でつながっていたり、引き戸などで仕切られただけの密閉性があるとは認められない構造である場合は、建物全体が一個としてみられ、たとい母親から増築することの承諾を得ていたとしても、増築部分を含む建物全体が母親の建物(所有)になってしまうのです。これを付合と言い民法第242条に規定されています。この条文には但し書きがあり、権原に基づき行われた場合を除外していますが、ある建物にくっつけて増築した場合、増築部分を簡単に切り取ることはできないし、仮に増築部分を切り取るとしても費用が掛かり過ぎて経済的に損失が大きいことから、但し書きの適用はないものと解釈されています。 ただし、あなたが支出した増築資金について、母親に償金を請求できる(民248)ことになっているので、実際にはその償金相当分を建物の共有持分として取得して対応することが一般的に行われています。具体的には、既存建物の評価額と増築部分の建築費の合計を分母とし、既存建物の評価額を分子としたものを母親の持分、増築部分の建築費を分子としたものをあなたの持分とする共同所有の建物として登記をする方法が行われています。 登記の手順としては、増築による建物の表題部変更登記をし、次いで先の方法により算出した持分について、あなた名義に所有権一部移転の登記をすることで、増築資金相当分が建物所有権として確保されたことになります。 なお、既存建物を先に算出した持分割合で母親からあなたに所有権一部移転登記をし、その上で母親とあなたとで建物増築登記を申請するという方法もあり、いずれの方法も増築後の建物が母親とあなたとの共有物となり同じ結果となります。 建物所有権の動きを時系列で考えますと、増築部分の所有権は付合により母親が取得したのですからまず増築登記をし、次いであなたの償金分について母親があなたに建物の所有権の一部を譲渡したとして所有権一部移転の登記をする方法が順当と考えられます。 ただし、所有権一部移転の登記は司法書士の職務分野ですが、権利の登記にかかる登録免許税額の観点から考えますと、後者による登記の方法がお勧めです。

A77.増築する場合、確認申請を必要としないケースがあります。増築後その建物が建築基準法に適合していて、しかも10㎡以内の増築である場合は、増築の建築確認は受けなくともよい(ただし、防火地域及び準防火地域内を除く)とされています(建築基準法第6条第2項)。あなたのケースはこれに当てはまるものと想定しお答えします。ご質問は、増築登記手続をする際建築確認済証が添付できないことについての懸念と思いますが、確認済証は絶対的な添付書面ではないので、他の所有権証明資料を添付して登記は可能です。登記手続としては、増築部分が前記のケースのように少ないとすれば、増築部分だけで、一個の独立した建物とみることは不可能と思われ、その場合は増築を原因として既存建物の建物表題部変更登記手続をすることになります。ここで、増築した建物が独立した一個の建物要件を充たしている場合は、既存建物を主たる建物とし、増築した建物を附属建物として登記をすることができます。

A78.建築確認申請は、工事に着手する前に、建物の敷地関係、構造、設備、用途等について建築基準規定に適合しているかどうかの判断を受けるため定められた機関(建築主事・指定確認検査機関)に提出し、適合している場合には確認済証が交付されるもので、登記とは直接の関係はありません。すでに保存登記をしてある建物とのことですが、所有権保存登記がしてあるからといって増築部分が自動的に登記記録に反映されるわけではありません。不動産登記法第44条は、建物の表題部には建物の所在、家屋番号、種類、構造および床面積、附属建物があるときはその種類、構造、床面積を登記することになっており、同法51条は、表題部について変更を生じたときは、所有者は一月以内にその変更の登記をするように規定しています。したがって、あなたの場合、増築をした部分につき表題部変更登記をする必要があります。建物表題部変更登記手続をするためには、増築した部分がだれの所有であるか増築部分はいかなる規模であるかを証明する書類として、建築確認済証、増築工事の請負人から引き渡しを受けたことの証明、工事代金の領収証等を添付して建物表題部変更登記申請をすることになります。

A79.まず、結論から申し上げますと、建物所有者であるあなたから増築登記ができます。また、必ずしも地主の承諾書は必要ありませんが、取得できれば添付してください。不動産登記法は、建物の表示に関する登記事項として、表題部に建物の所在、家屋番号、種類、構造および床面積を、そして附属建物があるときはその種類、構造、床面積を登記することになっており(法44)、同51条は、表題部について変更を生じたときは、所有者は一月以内にその変更の登記をしなければならないと規定しています。したがって、増築をした場合、所有者であるあなたは、建物表題部変更登記を申請する義務を負います。増築による建物表題部変更登記手続をする場合は、増築した部分がだれの所有であるかを証明する書類(所有権を証明する書類は別項を参照してください)を添付して申請します。ただし、ご質問は増築の承諾料は納めるつもりとあるので、事前に地主の承諾は得ているものと思われますが、借地契約書に増改築禁止特約がない場合(契約書がない場合を含む。)を除き、地主の承諾は必要ですのでご注意ください。

A80.建物の表示に関する登記には、いろいろな事項を表示しなければならないのですが、その中に建物の種類、構造および床面積の表示事項があります(法44Ⅰ③)。そして建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積によると定められ(規則115)、建物の一部が上階まで吹抜になっている場合には、その吹抜の部分は上階の床面積に算入しないことになっています(準則82⑧)。あなたが建物を新築したときは、その吹抜部分は床面積に算入されずに登記がなされていたはずです。しかしその後、吹抜部分に床を張って部屋として使用したとなれば、床面積不算入であった吹抜部分は算入すべき部分となり上階の床面積が増える結果となります。したがって、ご質問の場合はその工事の完了後一月以内に建物表題部変更登記をしなければならないことになります(法51)。

A81.増築部分が宅地に隣接する自己所有の山林の一部にかかってしまったとのことですが、登記手続としては土地に関する登記と、建物に関する登記の両方が必要となります。まず、土地に関する登記手続ですが、山林の一部が建物(庭の部分を含む)の敷地となったのですから、その部分の分筆登記をし、地目を山林から宅地に変更する必要があります。そのための手続として、一部地目変更による土地分筆登記を申請することになります(法37、39、規則35⑦)。土地分筆登記を申請する場合、山林の広さにもよりますが、原則として山林の部分と宅地化された部分の面積を明確にするため、当該土地全体を測量する必要があります。つぎに建物に関する登記手続ですが、増築したことによる建物床面積変更登記手続と増築によって建物の位置が隣接地(分筆によってできた新たな地番)にも及んだので建物所在地番変更登記手続をすればよいでしょう。なお、地目変更登記及び建物変更登記については、変更があった日から一月以内に申請しなければなりません(法37、51)。

A82.まず増築登記についてお答えします。
あなたの行った増築部分については、義母の同意を得て、あなたがお金を出して増築をしたとしても、原則として義母が所有権を取得することになります(民242本文)。同条但し書きは権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げないと規定していますが、増築部分を分離するなどの工事は事実上困難であり、かつ経済的にも損失が大であることから、この但し書きは適用されないと解されています。したがって、あなたの名前では増築登記はできないということになります。その代わり、あなたの出したお金は義母に請求できることになっています(民248)。ただし、増築部分が独立した構造(構造上、利用上区分されたもの)であれば既存建物に接続して区分建物を新築したものとして、その建物についてあなたの名義で登記をする方法もあります(区分建物に関しては、別項を参照してください)。また、義母が死亡したため既存建物をあなた名義に相続登記ができるかとのご質問ですが、あなたは相続人ではないためできません。相続人はあなたの妻とその姉の二人ですので、相続の登記はあなたの妻とその姉がすることになります。また、増築費用はあなたが出したことが明らかのようですので、義母の相続人であるあなたの妻とその姉に対し、増築費用を請求することができる訳ですが、増築費用を請求する代わりに建物の持分を譲り受け、増築登記後の建物全体を共有とする方法、もしくは増築登記の前に増築費用に相当する分を予め譲り受け、共有としたうえで増築登記をする方法もありますので、参考にしてください。ただし、ここで注意すべき重要な点があります。それはご質問の建物敷地が借地であるからです。増築費用を出したからと言って建物の名義人にあなたを加えることは、あなたが借地人ではないため、借地の無断転貸として賃貸借契約の解除原因になる虞があるからです(民612)。したがって、建物の登記名義人にあなたを加えることについては、予め賃貸人の承諾を得るか、賃貸借契約を変更するかいずれかの方法を取るよう注意しましょう。

A83.不動産登記制度に基づき、建物は土地と共に不動産として登記所に登記され、公示されることはご存じのとおりです。建物を登記する場合、その建物を特定できるよう、つまり他の建物と判別できるよういくつかの事項を登記します。登記する事項は主として所在地番、家屋番号、種類、構造、床面積等を登記するよう不動産登記法で規定されています(法44)。所在地番はその建物の所在地を、種類はその用途を表します。構造は構成部分の主要材料、屋根材、階層を、床面積は各階ごとの広さを表示します。したがってご質問のように屋根材をかわらからソーラーパネルにふき替えた場合は、構造に変更があったことになりますから、変更のあった日から一月以内に構造変更を原因として建物表題部変更登記手続をしなければなりません(法51)。

A84.不動産登記法は、建物を公示するために、所在、種類、構造、床面積を登記することになっています(法44)。そのうちの種類は、建物の主たる用途を表すものですが、主たる用途が二つ以上ある場合には、それぞれの種類を併記して登記することになっています。あなたの場合には、今まで住宅として使用していたのですから、建物の登記記録の種類の欄には「居宅」と表示されているわけです。それを 1 階の二間をスナックとして改造して利用することにしたのですから、建物の用途はこれまでの専用住宅から店舗併用住宅となり、主たる用途が二つになったことから建物の種類は「居宅・店舗」と表示される必要があります。不動産登記法では、建物として表示すべき事項に変更が生じた場合には、所有者から一月以内に建物の表題部の変更登記を申請するよう定められています(法51)。

A85.建物登記には、建物の所在が登記事項となっています。ご質問は、隣の土地に曳き家をしたとのことですので、建物のえい行移転は、建物の所在の変更として取り扱うものとするとの規定(準則85Ⅱ)に従い、えい行移転を原因として建物表題部変更登記を申請することになります。また、表題部に記載している所有者または所有権の登記名義人は、えい行移転が完了した日から一月以内に申請をする義務を負います(法51条)。ご質問の場合は、他の地番にえい行移転した場合ですので、建物所在変更として建物表題部変更登記を申請します。なお、広い敷地で同一地番内でのえい行移転は、建物図面の変更の申出となります。また、一度建物を取り壊して、その材料を用いて他の土地上に建築した場合(建物の解体移転)は、滅失および新築として取り扱うこととなります(準則85Ⅰ)。

A86.土地区画整理事業は、都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善及び宅地の利用増進を図るため、区画の変更や公共施設の新設、変更を行う事業です。具体的には、道路、公園、水道、下水道、電気等公共施設の整備及び不整形な土地を整形にするなど生活環境の大幅な改善が図られます。当然のことながら、事業区域に道路など公共施設を整然と配置し、宅地を整形に区割りして割り当てるわけですから、そのために移転せざるを得ない住宅もあります。土地区画整理事業により、家屋が道路にかかり別の地番に家を引っぱったとのことですので、家屋の所在地番が変わってくるわけです。土地区画整理の事業計画に基づいて、通常は事業区域内にえい行移転しますが、稀には区域外にえい行移転することもあるようです。したがってそのような場合には、変更のあった日から一月以内に変更の登記をしなければなりません(法51Ⅰ)。

区分建物登記に関すること

A87.区分建物とは、マンションのように一棟の建物の構造上区分された部で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができる専有部分をいい(法2 ㉒)、登記申請は各戸ごとに登記申請をするのではなく、全ての区分建物を同時に申請します(法48)。ご質問は、あなた所有の土地の上にあなた所有の建物を新築したとのことですので、あなたが申請人としてすべての区分建物(専有部分)を一括申請します。この場合、土地、建物が同一所有者ですので、土地の敷地利用権と専有部分は原則として分離処分できません(区分22Ⅲ)。これを一体化といいます。敷地利用権のうち登記した権利で分離処分できないものが敷地権ですが、各区分建物の敷地権割合は、原則各専有部分の床面積の割合になります。ただし規約で別の定めをしたときはその割合になります(区分22Ⅱ)。この場合の規約は、公正証書により設定することになります(区分32)。区分建物を新築した場合は、新築した者(原始取得者)は新築の日から一月以内に区分建物表題登記申請をしなければなりません(法47Ⅰ)。なお、区分建物を新築した者の相続人その他一般承継人も被承継人名義で申請することができますが、原始取得者から所有権を取得した者(転得者)からの申請はできません。

A88.建物を登記する場合には、全体を一個の建物として取り扱うのが原則(準則78Ⅰ)ですが、分譲マンションとして売り出したいとか、所有者の意思によっては区分建物として登記したい場合があります。その場合、一棟の建物としての認定基準のほか、区分建物として登記するための要件に次の二つがあります(準則78Ⅱ)。

① 構造上の独立性を有すること。
構造上の独立性とは、建物の構成部分である仕切り壁、床、天井などで他の部屋と構造上はっきり区分された状態をいいます。

② 利用上の独立性を有すること。
利用上の独立性とは、その建物がそれだけで住居、店舗、事務所などの用途に使用できる状態であること。また、その建物と外部との出入りが他の建物を通らず、共用部分(廊下、階段室、エレベーター等)を通るだけで可能であることをいいます。 なお、各区分建物に通じる廊下、階段室、エレベーター室など、構造上各区分建物の所有者全員または一部の者の共用に供される部分(共用部分という。)は、区分建物としての登記はできません(準則78Ⅲ)。

以上が区分建物として登記をする場合の要件です。参考にしてください。

A89.普通の建物の床面積は、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積(壁芯面積)により計算しますが、区分建物の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積により計算します(規則115)。壁は、廊下、エレベーター室等と同様に専有部分所有者全員の共用部分(法定共用部分)となるためで、各自が所有する専有部分は内壁計算での室内空間になります。ご質問の区分建物の面積がパンフレットと登記とで相違しているとのことですが、パンフレットは壁その他の区画の中心線で計算されたものであり、登記は内側線で計算したものであるため、一般的にはパンフレットより登記が小さくなっています。このことから、床面積が50㎡前後の場合、税控除等で注意が必要となる場合があります。

A90.マンションの一部屋(以下「専有部分」という。)を所有するためには、敷地を利用する権利がなければなりません。これを敷地利用権といいます。敷地利用権には所有権、地上権(建物所有)、賃借権、使用借権等があり、登記の有無は問いません。敷地利用権と専有部分とは、別々に処分できない場合(分離処分禁止)と処分できる場合(分離処分可能)があります。敷地権とは、登記された敷地利用権で、敷地利用権と専有部分と分離して(別々に)処分できないもの(一体化)をいい、登記された所有権、地上権(建物所有)または賃借権に限られます(法44Ⅰ⑨)。したがって、ご質問の敷地権付区分建物とは、敷地権の登記がある区分建物をいいます。

A91.まず、その長屋が区分建物に該当するか否かを判断する必要があります。区分建物とは、いわゆるマンションの各戸が代表的な例ですが、構造上、利用上独立性を有する建物であることを要件としており、この要件を充たしていれば各戸を独立して登記をすることができるのです。ご質問の二軒長屋は、各戸ごとに借家人がいるようですので、こうした要件を充たしていると思われます。ここで区分建物の要件について具体的にご説明します。

① 構造上の独立性を有すること。
一棟の建物の部分で、構造上区分されたものであって、建物の構成部分である床、天井、壁等によって他の部分と遮断されていること。

② 利用上の独立性を有すること。
独立して建物としての用途に供することができるものであって、その建物の部分と外部との出入りが他の建物の部分を通らずに直接に可能であるか、あるいは共用部分(廊下、階段室等)を通るのみで外部との出入りが可能であること。ご質問の二軒長屋は、共同住宅として登記されているようですが、借家人に同人が居住する建物部分とその敷地部分とを売却するには、あなたの言うように土地の分筆登記をすること、及び現在の建物の登記を区分建物とする建物区分登記を申請することになります。ただし、土地と建物が同一所有権者であるため、建物区分登記を申請することにより区分建物の敷地(法定敷地という。)には敷地権が発生することになりますので、敷地権を発生させないための分離処分可能規約(公正証書により作成)を建物区分登記の申請書に添付しなければなりません。こうすることにより、借家人に対し、同人の居住している区分建物と分筆した当該建物の敷地を売却できることになります。

滅失登記に関すること

A92.不動産登記法は、建物が滅失したときは表題部所有者または所有権登記名義人は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならないと規定しています(法57)。建物の滅失とは、取り壊しのほかに倒壊、流出、焼失、解体移転などがありますが、いずれの場合も滅失登記をしなければならないことになります。滅失登記をしないと現存しない建物の登記が永久に登記記録に残ってしまうことになりますので、この際、建物滅失登記をしてください。土地家屋調査士が建て替えなどによる建物の登記を依頼された場合には、土地や建物の登記記録などを調査して、当該建物の敷地所有者、公図との位置、形状の対査、既登記建物の有無等を綿密に調べます。したがって、滅失した建物の登記が残ってしまうことはありませんが、建物登記記録を調査していると、ご質問のように現存しない建物が登記されたままになっていることがあります。その場合には必ず建物滅失登記をするようにしています。あなたの場合は、祖父も父親も亡くなっているようですので、あなたが相続人であることを戸籍謄本等で明らかにしたうえで、あなたから建物滅失登記を申請してください。なお、建物滅失登記には、取り壊し事実の証明書を添付するのが通例ですが、それは無理と思われますので、滅失の経緯などの事実をしたためた書面(上申書)に実印を押印し、印鑑証明書とともに申請書に添付して手続をしてください。

A93.登記してある建物を取り壊したときは、取り壊した日から一月以内に建物滅失登記をしなければなりません。建物滅失の事由には、取り壊しのほかに焼失、流出、倒壊、解体移転等が考えられ、建物が物理的に消滅した事実をもって建物滅失と判断します。そして建物が滅失したということは権利の客体が無くなるわけですから、その建物に存していた所有権、抵当権等一切の権利が消滅するという重大な意味を有しています。建物滅失登記は、建物が滅失したという事実の登記ですから所有者の印鑑証明書を添付する規定はありません。しかし、前述のとおり権利の存否に関係する重大な手続であることから、事実に反する登記を防止し、かつ真正を担保するため、土地家屋調査士が代理人として建物滅失登記を申請する場合、申請人(家屋所有者)に印鑑証明書の提出を極力お願いしているところです。そのほか土地家屋調査士が代理人として建物滅失登記を申請する場合には、建物滅失の事実を工事人の証明書などで確認するほか、現地を調査・確認するなど、特別に注意を払うとともに、その結果をまとめた不動産調査報告書を作成し、それを申請書に添付して登記所に提出しています。

A94.不動産登記法は、建物が滅失したときは、所有者は一月以内に建物の滅失の登記の申請をしなければならないと定め、登記申請が義務付けられています(法57)。また、建物滅失登記をしなければ、建物の登記がいつまでも残ったままになってしまうことにもなります。もとより表示に関する登記は、土地や建物の状況を正しく登記記録の表題部に反映させることが目的であることから、登記官は職権ですることができることになっています(法28)が、登記官が建物滅失登記など登記義務が課せられている事項で登記申請のないものを発見したときは、直ちに職権で登記することなく、登記申請義務者に対して登記申請を催告することになっています(準則63)。しかし、ご質問のように建物登記名義人(所有者)について調査を尽くしても行方が分からないときは、建物登記名義人からの建物滅失登記申請は不可能であるため、土地所有者であるあなたから、利害関係人として登記官の職権発動を促す意味で、建物滅失登記をするよう申出をすることができます。

A95.マンションが隣室のガス爆発により復旧不能な状態まで破壊されたとのことですので、区分建物の滅失となります。この場合には表題部所有者または所有権の登記名義人は、一月以内に建物滅失の登記を申請しなければなりません(法57)。マンションなどの区分建物の登記記録には、個々の区分建物が属する一棟の建物の表題登記があり、次に個々の区分建物(専有部分)の表題登記があります。建物滅失登記の申請により該当する区分建物(専有部分)の登記記録は閉鎖されますが、影響のなかった人たちの区分建物(専有部分)の登記記録には何らの影響もありませんので、登記がなくなるという心配はありません。なお、区分建物の滅失登記をすることにより一棟の建物の表題部の変更が伴いますので、その変更も同時に申請することになります。

A96.建物の重複登記は、所有者が同一人である限り、後になされた登記が無効であり、したがって後になされた登記を抹消すべきであるとされています(昭和37.10.4民事甲2820号民事局長通達)。ただし、前の登記は所有権保存登記のみで、後になされた登記は第三者の権利に関する登記がある場合には、同一所有者である限り便宜前の登記を抹消しても差し支えないとされています(昭和39.2.21民事甲384号民事局長通達)。以上のことからご質問の場合、原則的には後の登記(家屋番号64番の 2 )を抹消することになると考えますが、二つの登記の所有者が同一であり、前になされた登記は表題部のみで、後になされた登記には所有権保存の登記があるとのことですので、前述ただし書きに示した内容を拡大解釈して、前になされた建物の表題部の登記(家屋番号64番)を抹消することができると思われます。

A97.あなたの所有する二棟の建物は、50番の土地が8筆に分筆される前に建てられたので、家屋番号が50番の1 50番の2 と振られたのだと推察します。そして、その後8筆に分筆されたため、敷地番と家屋番号が整合しないものになったのでしょう。ところで、あなたが二重登記かもしれないと推測する家屋番号267番の表題部のみの建物は、家屋番号の振り方から家屋台帳時代の建物と思われ、50番の1の建物と規模が同じであったとしても、二重登記ではなく、50番の1、50番の2の建物が建築される前にあった建物ではないかと推測します。即ち、現在の二棟の建物を建築するにあたり取り壊したにもかかわらず、滅失登記をしないまま現在に至ったのではないかと思われます。ご質問の内容からは、推測でお答えするしかありませんが、現存しない建物の抹消登記をするには、原因を詳しく調査しなければならず、かなり専門的な知見を必要としますが、建物が現存しないということが確証できる内容の申請であれば登記は可能と考えます。

A98.銀行の抵当権が設定してある建物を取り壊して新たに共同住宅を新築したいとのことですが、当該抵当権の被担保債務が残存している場合と、既に借入金は返済され抵当権の登記のみが抹消されずに残っている場合とに分けてお答えすることにします。まず、被担保債務が残存している場合ですが、銀行から融資を受け抵当権を設定した際の契約書には担保物件に重大な変更を来す場合には、あらかじめ銀行の承認を得なければならない旨の条項がある筈で、そのような規定のある契約書が一般的です。したがって、あなたの場合も建物の取壊しに着手する前に抵当権者である銀行の承認を得なければならないことになります。承認を得ずに取り壊した場合には残りの債務全部をただちに返済するよう迫られることがありますので注意してください。また、既に借入金は返済され抵当権の登記のみが抹消されずに残っている場合は、銀行に抵当権抹消の登記手続を要請し、抵当権を抹消してから建物を取り壊すことをお勧めします。そして、建物を取り壊した場合は、建物の所有者は取壊しが完了した日から一月以内に建物の滅失登記の申請をしなければならないことになっています(法57)。先に滅失登記をすることによって、新築した共同住宅の登記をしても登記がダブることはないわけです。

登記識別情報に関すること

A99.平成16年不動産登記法が改正され、インターネットを利用したオンライン申請が可能となりました。オンライン申請とは、登記所に出向くことなくコンピュータのインターネットを利用して登記申請情報を送信し登記手続をする方法です。さいたま地方法務局上尾出張所が平成17年3月22日オンライン庁として、全国で最初の指定を受けオンライン申請が実施され、現在では全ての登記所でオンライン申請が実施されています。以前は、書面による申請以外は認められておらず、かつ登記完了時に登記権利者に対し登記済証が登記所から交付される(旧法60Ⅰ)方式でしたが、オンライン申請の導入により、登記済証の交付ではなく、それに代わるものとして登記識別情報通知が発行されるようになりました(法21)。登記識別情報は、アラビア数字その他の符号の組み合わせ(12桁)により、不動産及び登記名義人となった申請人ごとに通知されます(規則61)。登記識別情報は、登記申請の際に登記名義人であることの証明資料として登記所に提供するための重要な情報ですので、これを第三者に見られたり、コピーされたりすると、従来の登記済証が盗まれたのと同様の結果となりますので管理には十分にご注意ください。登記済証・登記識別情報ともに、当該不動産の売買や、担保に供する等の登記申請のときに登記所へ提出するもので役割は同じです。

代位登記に関すること

A100.不動産登記法は原則として土地の分筆登記は表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は申請することができないと規定しています(法39Ⅰ)。したがって、原則は前記規定に則り、地権者自らが分筆登記手続をすることになるのですが、ご質問のように市の事業として行う場合には、拡幅部分を市に寄付するとの地権者の承諾書を添付して、市が地権者に代わって分筆登記手続をすることができるので、地権者自らが分筆手続をすることはないと考えます。市が地権者に代わって分筆登記手続をすることができるのは、民法の債権者代位という規定(民423Ⅰ本文)に基づくものです。そして、市が本人に代わって登記を嘱託するので、これを代位登記嘱託といいます。なお、登記手続をする行為を一般に申請といいますが、官庁若しくは公署がする手続は嘱託といいます(法16)。

A101.区分建物を新築した場合は、新築した者は新築の日から一月以内に区分建物表題登記申請をしなければなりません(法47Ⅰ)。かつ区分建物が属する一棟の建物が新築された場合は、すべての区分建物を同時に申請しなければならない(法48Ⅰ)と規定されています。ご質問は、各区分建物の所有者が都合により同時に申請できないとのことですが、このような場合、区分建物の所有者は、他の区分建物の所有者に代わって他の区分建物についての表題登記を申請することができるとの規定(法48Ⅱ)により、あなたが家族に代わってすべての区分建物を単独で申請することができます。この場合、代位原因証明情報としてあなたの一棟の区分建物の所有権を取得したことを証する書面を添付して申請します(令7 Ⅰ ③)。

A102.不動産登記法は、表題登記がある建物(区分建物を除く)に接続して区分建物が新築された場合における当該区分建物についての表題登記の申請は、当該表題登記がある建物についての表題部の変更の登記の申請と併せてしなければならない(法48Ⅲ)。また、表題登記がある建物(区分建物を除く)に接続して区分建物が新築されて一棟の建物となったことにより当該表題登記がある建物が区分建物になった場合における当該表題登記がある建物についての表題部の変更登記の申請は、当該新築に係る区分建物についての表題登記の申請と併せてしなければならないと規定しています(法52Ⅰ)。ご質問は、お父様名義の登記がある建物に接続してあなたが区分建物を新築されたとのことですので、あなたが新築した区分建物の表題登記を申請するのに併せて、お父様名義の建物についても表題部の変更の登記の申請をしなければならないことになります。そして、この場合不動産登記法は、区分建物の所有者は、当該表題登記がある建物の表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの者の相続人その他の一般承継人に代わって当該表題登記がある建物についての表題部の変更の登記を申請することができる(法48Ⅳ)と規定していますので、あなたが新築された区分建物の表題登記と併せてお父様名義の建物についても表題部の変更の登記申請をすることが可能です。また、お父様が既存建物の表題部の変更登記を申請するのに併せてあなたの区分建物表題登記をあなたに代わって申請することも可能です(法52Ⅱ)。

埼玉土地家屋調査士会の社会貢献活動

A103.境界問題相談センター埼玉(以下「センター」という。)は、境界に関する紛争について、埼玉土地家屋調査士会が埼玉弁護士会の協力を得ながら運営している裁判によらない紛争解決を行う団体です。センターは、境界紛争で困っている方の申立てを受けて、境界の専門家である土地家屋調査士と法律の専門家である弁護士が同席して相談及び調停を行っています。センターで行う相談及び調停は、専門家の知識やノウハウを活用してトラブルの実情をきちんと踏まえた迅速な解決が期待できるとともに、裁判と異なり非公開で行われ、秘密が厳守されるため安心でき、柔軟でトラブルの実情に合わせて、お互いが納得できる解決を図ることが可能です。なお、センターは、裁判によらない紛争解決機関として、法務大臣の指定を受けています(法務省告示第582号、平成19年12月11日)。

A104.埼玉土地家屋調査士会では、社会貢献活動の一環として、平成22年10月を皮切りに、埼玉県をはじめ県内40余市町と災害時における家屋被害認定調査に関する協定(以下「災害協定」という。)を締結しています。この災害協定は、埼玉県内で災害が発生したとき、埼玉県、市町から埼玉土地家屋調査士会に住家の被害認定調査の協力を要請された場合に、埼玉土地家屋調査士会の会員を派遣し、当該協力を行うことになっています。これまで東日本大震災等の災害の際に、埼玉土地家屋調査士会の会員が参加して認定調査の支援を実施しました。

A105.埼玉土地家屋調査士会は社会貢献活動として出前授業平成29年1月には草加市立両新田中学校で 2年生168名を対象に実施しました。学校からは全員に受けさせたいとの要望があったため、生徒を2班に分け、 1 班は体育館で「三角形と縮図」をテーマに座学を行い、もう1班は校庭で歩測という授業をし、時間を決めてそれぞれ交代して行いました。最後に体育館で全員がコンパスと定規を使用して歩測したデータから作図を行い、校庭に地上絵として何が描かれていたのか答えを出し合いました。調査士会会員は、生徒たちが体育館で作図している間に、校庭で地上絵を完成させ、生徒達に再び校庭に出てもらい、完成した地上絵を確認したあと記念撮影をして終了となりました。平成30年11月には幸手市立長倉小学校で 6年生89名を対象に実施しました。当日は小雨の降るあいにくの天気で、校長先生に相談したところ、傘を差してでもぜひ実施したいとのご意向でしたので、テープ測量で拡大した地上絵を校庭に描くことをテーマに行いました。時間が経つにつれ地上絵が完成してくると児童の中から「校章じゃないか?」との声が出始め、線を結び終えて見事に校庭一杯に校章の地上絵が完成したときは大きな歓声が沸きました。校庭で児童と調査士会会員と記念撮影をした後ドローンでの空撮を行い、次いで体育館に移動して「拡大と縮小」をテーマとした座学を行いました。埼玉土地家屋調査士会は、今後も社会貢献活動として出前授業を計画しています。

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